最新記事

ダイアナ死去から20年

ダイアナを「殺した」のはマスコミか

2017年8月31日(木)19時00分
マシュー・クーパー

60年代には、ジャクリーン・ケネディ・オナシスの二度の結婚によって多くのパパラッツィが大金を稼いだ。そうした写真の受け皿が増えるにつれ、彼らの行動はますます大胆になり、標的にされる有名人も増えた。

なかでもダイアナは最高の「獲物」だった。ほかにも大物はたくさんいたが、写真の買い手がつける値段の高さでは、彼女の右に出る者はいなかった。

ダイアナが、必要とあらばマスコミを利用したのは事実だ。BBCのインタビューに応じたのは離婚を有利に進めるためだったし、自分のかかわる慈善活動が取材を受けるときは嫌な顔ひとつ見せなかった。

それでも、マスコミが彼女にもたらしたものはプラスよりマイナスのほうが多かった。恋人のドディ・アルファイドと洋上で戯れているところを撮影した最近の写真には、600万ドルを超える値段がついた。スポーツジムから父親の葬儀まで、文字どおりあらゆる場所にパパラッツィは出現した。

【参考記事】ダイアナ悲劇の死から20年、活発化する暴露の動き

幅広いメディアのニーズ

パパラッツィにとって、どこまでが許容範囲で、どこからがそうでないのか。ロサンゼルス在住の芸能カメラマン、スコット・ダウニーにそう尋ねると、彼はこう答えた。「イギリス王室に関するかぎり、超えてはならない一線など存在しない」

「マスコミは残忍。人のあら探しをするだけだし、何をやっても批判される」。ダイアナは最近の仏ルモンド紙のインタビューで、痛烈にマスコミを批判していた。「私の立場におかれたら、正気な人間ならとっくに[イギリスを]出ているでしょう。でも私には無理。息子たちがいますから」

さらに、マスコミ側にもニーズが存在する。三流芸能紙や、イギリスの大衆紙だけではない。硬派のニュース雑誌やライフスタイル雑誌、テレビ番組など、相当数の媒体が有名人の写真を求めている。

本誌も、ときにパパラッツィの写真を掲載して利益を得たことは事実だ。たとえばケネディ・ファミリーの御曹司、ジョン・F・ケネディJr.と結婚したキャロリン・ベセットを特集した号では、パパラッツィが撮った写真をふんだんに使った。

今回の悲劇を契機に、こうした需要がすべてなくなるとは考えがたい。「短期的には誰もがひどく用心深くなるだろうが、いずれはすべてが元に戻る」と、欧州のある編集者は言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トムソン・ロイター、第1四半期は予想上回る増収 A

ワールド

韓国、在外公館のテロ警戒レベル引き上げ 北朝鮮が攻

ビジネス

香港GDP、第1四半期は+2.7% 金融引き締め長

ビジネス

豪2位の年金基金、発電用石炭投資を縮小へ ネットゼ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中