最新記事

核戦争

冷戦期以来、アメリカでも売れ始めた核シェルター

2017年9月20日(水)18時00分
マックス・カンター

マイアミ・ヘラルドの取材に答えた別のシェルター製造業者、ライジング・S・バンカーズのゲイリー・リンチは、2016年に販売したシェルターはわずか9基だったのに対し、2017年にはすでに67基に達していると話した。シェルターの価格帯は、3万9500ドルから840万ドルまでさまざま。最も高価なタイプは「アリストクラット・ラグジュアリー・バンカー」(貴族の高級避難壕)といい、50人以上が寝泊まりできるスペースのほか、サウナ、水泳プール、温水浴槽、ビリヤードテーブル付きの娯楽室、ボウリング場、映画館、射撃場を備えている。

今や核シェルターは成長産業になりつつあるようだ。コロンビア大学地球研究所に置かれている国立防災センターのジェフ・シュルゲルミルチ副所長は本誌の取材に対し、「こうした方面にかなりの資金が流れているのは間違いない。この市場が成長すると考え、多額の資金を注ぎ込んでいる投資家もいるのは確かだ」と述べた。ただし、肝心の核シェルターの実効性については、「シェルターのメーカーや、品質による。予算次第という部分はあるのではないか」と言う。

地下室がない人向けも

ニューヨーク市のような都市部に住んでいて、シェルターをつくるような地下空間がないという人には、ギャフコ・バリスティックスのような企業が、「バイオディフェンス」能力を持つ防護室を提供している。ギャフコ社の最高経営責任者(CEO)、トム・ギャフニーは本誌に対し、6~7年前から、こうした防護室への引き合いが増えてきたと語った。生物化学兵器によるテロの脅威が高まったことによる。

ギャフコ社のウェブサイトによると、避難用の部屋には空気濾過システムが設けられており、「核、化学および生物系のガスの影響から、かなりの期間にわたって室内を守る」という。さらにこの部屋には、室内から外気の汚染レベルをリアルタイムで把握できるモニターも設けられている。ギャフニーによれば、5、6月以降、問い合わせの電話やメールは20~30%増加しているという。

「世間の意識は確実に高まっている」と、ギャフニーは言う。良いこととは言えないが。

(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日仏、円滑化協定締結に向けた協議開始で合意 パリで

ワールド

NATO、加盟国へのロシアのハイブリッド攻撃を「深

ビジネス

米製造業新規受注、3月は前月比1.6%増 予想と一

ワールド

暴力的な抗議は容認されず、バイデン氏 米大学の反戦
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 10

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中