最新記事

人質事件

武装組織が人質1300人、インドネシア・パプア州で謎の村落占拠事件

2017年11月15日(水)21時40分
大塚智彦(PanAsiaNews)

パプア州にあるフリーポート関連の鉱山。事件現場は人を寄せ付けない場所にあり容易に近づけない Muhammad Adimaja/Antara Foto/REUTERS

<ニューギニア島のパプア州の村で警官らに対する銃撃事件が相次いだことから発覚した大量人質事件。地元では、イスラム系テロ組織説から独立運動説、米資本の鉱山会社での労働争議説まで諸説乱れ飛ぶが、未だ決め手がない>

インドネシア最東端に位置するニューギニア島にあるパプア州で正体不明の武装集団が複数の村を占拠し、住民など1300人を人質にとる事件が起きている。インフラもほとんど整備されていない遠隔の地だけに、ニュースは地元の州警察や首都ジャカルタの国家警察の発表と数少ない地元メディアの情報に限られている。事件の詳細は不明で現地の様子を伝える映像もほとんどなく、一体何が起きているのか、インドネシア国内でも謎の事件として注目を集めている。

ことの発端は10月21日の現地時間午後12時半ごろ、同州の山間部に位置するミミカ県トゥンバガプラ地方のウティキニ川沿いにある小さな村を巡回警備中の州警察機動部隊車両が突然銃撃を受けて、警察官2人が負傷したことだ。同日朝には離れた場所で鉱山開発関連会社の車が銃撃され、運転手が負傷する事件も起きていた。

この2件の銃撃事件の捜査していた警察部隊が同日午後に再び発砲を受け、警察官1人が死亡、6人が負傷する事態になった。

このため警察は警察官を増員、完全武装で同地域での犯人捜査に乗り出したところ、11月6日ごろから周辺のバンティ村とキムベリー村が正体不明の武装組織に占拠され、住民など1300人が人質に捕らわれていることがわかった。

イスラム系テロ組織の犯行か

「武装した集団が住民を人質に取って村を占拠」という事件の第一報は、インドネシア政府、治安当局をあわてさせた。フィリピンのミンダナオ島マラウィ市を5月に占拠し、戒厳令下フィリピン国軍と本格的戦闘を10月まで続け、多くの犠牲者がでたイスラム系武装組織と中東テロ組織「イスラム国(IS)」シンパによる事件を想起したからだ。マラウィ市での状況が武装組織に不利になるにつれ海路インドネシアに逃走したメンバーの存在も伝えられ、インドネシアも国境警備を強化していた経緯がある。

しかし今回はパプア州の南部の山間部でとても外部から入り込める地域でないことや目撃証言による外見や言葉からパプア人の集団であること、武装しているとはいえ、拳銃や小銃レベルで一部は弓や槍を所持していることなどから、イスラム教系テロ組織の可能性は否定された。

警察は「犯罪者集団」との見方

地元パプア州警察、インドネシア国家警察によると、村々を占拠している武装集団は当初20~25人とみられていたが、その後約100人と判明、ほぼ全員が武装し、住民と近くの金鉱山で働く州外からの労働者1300人が人質になり村外への移動を阻止されているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ブラジル経済活動指数、第1四半期は上昇 3月は低下

ビジネス

マイクロソフト、中国の従業員700人超に国外転勤を

ワールド

アルゼンチン、4カ月連続で財政黒字達成 経済相が見

ワールド

トランプ氏、AUKUSへの支持示唆 モリソン前豪首
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 8

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 9

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中