最新記事

中国共産党

中国新「中央宣講団」結成――中国に進出する日本企業にも影響か

2017年11月6日(月)15時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

新チャイナ・セブン入りした中国三代「紅い皇帝」のブレイン、王滬寧 Jason Lee-REUTERS

第19回党大会一中全会で選ばれた中共中央政治局委員は、中宣部を中心として新「中央宣講団」を結成し、共産党精神の宣伝活動に入った。指導するのは新チャイナ・セブンの一人、中国のブレイン・王滬寧だ。

中央宣講団とは

「中央宣講団」とは中国共産党の思想宣伝をするために2015年11月4日に結成されたもので、「中国共産党の精神を再び人民に植え付けなければ、一党支配体制は崩壊する」という危機感から生まれたものだ。

それまでのように中宣部(中共中央宣伝部)が中央にいて、文書や新聞テレビなどを中心に一方的に情報を発信するのではなく、中央のあらゆる関係部門と提携して、地方にも出かけていき、「講話」も含めた双方向的な党宣伝を行なっていこうという組織である。

その新しいメンバーが、今年11月1日に誕生した。

中国共産党の機関紙「人民日報」や中国共産党が管轄する中央テレビ局CCTVなどが一斉に伝えた。今回は党規約に明記された「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」を中心として、中国全土、津々浦々に「中国共産党の良さ」を再洗脳することが目的だ。

その主たるメンバーを、いくつか列挙してみよう。( )内は、第19回党大会で新しく選ばれた中共中央政治局委員や職位である。

●楊暁渡(中共中央政治局委員、中共中央書記処書記、中共中央紀律検査委員会副書記)

●陳敏爾(中共中央政治局委員、重慶市書記)

●黄坤明(中共中央政治局委員、中共中央書記処書記、中共中央宣伝部部長)

●蒋建国(中共中央宣伝部副部長、国務院新聞弁公室主任)

......など計36名で、この後には中共中央政治局委員ではない多くの組織の代表者の名前が続く。

筆者が個人的に興味深く思ったのは、その数多くの組織の中に「中共中央文献研究室」の主任の名前が入っていることだ。

中共中央文献研究室はかつて(1993年)『毛沢東年譜』を出版したことがある。全九巻にわたる大部のもので(計6000頁強)、これを1頁ずつめくっていけば、拙著『毛沢東 日本軍と共謀した男』に書いた事実が真実であることを確認できる。

中国共産党の思想宣伝をするために設けられた「中央宣講団」が、中国の国是である「実事求是(じつじ・きゅうぜ)(事実の実証に基づいて、物事の真理を追求する)」精神に基づいて思考する勇気を持っていれば、「日中戦争時代、毛沢東が日本軍と結託して国民党軍を弱体化させた事実」を認めるしかなくなるはずだ。

おまけにこの「中央宣講団」のメンバーには「中央党史研究室」主任もいる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中