最新記事

エンタメ

ディズニー、FOX買収で動画配信市場に殴り込み

2017年12月15日(金)17時41分
アンナ・メンタ

新会社の経営統合の指揮を執るウォルト・ディズニーのローバート・アイガーCEO Gary Cameron-REUTERS

<来年動画配信サービスを始める予定のディズニーの相次ぐコンテンツ買収は、先行するネットフリックスやアマゾンの脅威になる>

米メディア大手ウォルト・ディズニーは、同業の21世紀フォックスの映画やテレビなどのエンタメ部門を、総額661億ドル(7兆4000億円)で買収することで最終合意した。ディズニーと「メディア王」ルパート・マードック率いるフォックスの大事業は今後、独禁当局の認可を待って来年夏ごろに完成することになる。

交渉は数週間前から進んでおり、ディズニーが12月14日にホームページ上で発表した。フォックスは、FOXブロードキャスティングやFOXニュース、FOXスポーツなどのニュース・スポーツ部門は売却せず、スピンオフ(分離・上場)する計画。ディズニーのロバート・アイガーCEO は2019年に退任する予定だったが、任期を2021年まで延長する。マードックが、円滑な経営統合を指揮してくれるよう要請したという。

フォックス買収によってディズニーは、映画スタジオの20世紀フォクスやナショナル・ジオグラフィック、有料放送番組FX、地方スポーツチャンネルを獲得。英衛星放送スカイと動画配信のHuluの株式も取得する。人気映画の『Xメン』や『アバター』、人気ドラマの『ジ・アメリカンズ』、『ディス・イズ・アス』、『モダン・ファミリー』など、フォックスが持つ多様で収益性の高いコンテンツも傘下に収める。アニメ『シンプソンズ』の主人公一家も、ディズニー・ワールドに引っ越しだ。

アベンジャーズにデッドプールが出演?

また、2本の続編が予定されているジェームズ・キャメロン監督の映画『アバター』シリーズがディズニーの傘下に入ることにより、全米歴代興行収入の上位5作品のうち3作品をディズニーが保有することになりそうだ。1位の『スターウォーズ/フォースの覚醒』、2位の『アバター』、5位の『アベンジャーズ』だ(4位は米パラマウントの『タイタニック』、5位は米ユニバーサル・ピクチャーズの『ジュラシックパーク』)。

ディズニーは来年、動画配信サービスを始める予定。今度の買収で、動画配信会社Huluの過半数の株式も手にする。いずれディズニーは、先行する動画配信大手の強力なライバルになるだろう。ネットフリックス、アマゾン、グーグル、フェイスブックにとっては脅威だ。

拡大を続ける娯楽帝国ディズニーの意図を怪しむ人もいる。だがマーベルコミックのファンにとって、この買収劇は朗報だ。今はバラバラのスタジオが所有するアベンジャーズ、Xメン、デッドプールなどのスーパーヒーローたちがまとめてディズニー傘下に入るからだ。

そう、アベンジャーズの映画にデッドプールが登場する日も来るかもしれない。ただし「"R指定"ヒーロー」のデッドプールが、ディズニーにふさわしいと判断されればの話だが。

(翻訳:河原里香)

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!

気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを

ウイークデーの朝にお届けします。

ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

南ア、イスラエルのラファ攻撃「阻止する必要」 国際

ビジネス

マイクロソフト、中国の一部従業員に国外転勤を提示

ビジネス

先進国は今のところ賃金と物価の連鎖的上昇回避、バー

ワールド

北朝鮮の金与正氏、ロシアとの武器取引否定 「ばかげ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 6

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 7

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 8

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中