最新記事

北朝鮮情勢

米朝戦争になったら勝つのはどっち?

2017年12月1日(金)19時47分
ジョン・ホルティワンガー

軍事演習に参加する北朝鮮兵士。兵士数は世界4位だが栄養状態は最低レベル? KCNA-REUTERS

<単純な軍事力の比較ならアメリカが北朝鮮を圧倒するが、楽勝とはいかない>

北朝鮮が11月29日、ワシントンさえ脅かしそうなICBM(大陸間弾道ミサイル)を発射したことで、米朝戦争の可能性は日増しに高まっているようにみえる。

北朝鮮の金正恩党委員長とドナルド・トランプ米大統領はここ数カ月、今度手を出したら互いを「完全破壊」すると威嚇し合ってきた。そこへ北朝鮮が「アメリカ本土全域を攻撃できる」新型のICBMの発射実験をしたことで、トランプ政権は再び武力行使の選択肢を検討し始めている。

【参考記事】北朝鮮「亡命兵士」の命を脅かす寄生虫の恐怖

こうなるとアメリカ人も今年ずっと恐れてきた疑問に向き合わざるを得ない。もしアメリカと北朝鮮が戦争になったら、どちらに勝ち目があるのか。

アメリカと北朝鮮は数十年にわたり敵対し、万一の軍事衝突に備えて大量の兵器を備蓄してきた。もし軍事衝突が現実のものになれば、米朝は次のような現実に直面するだろう。

■軍事力で上回るのは?

アメリカの米軍は世界最強で、北朝鮮を圧倒するのは間違いない。だからといって、軍事衝突でアメリカが容易かつ速やかに北朝鮮を倒せる保証はない。

世界133カ国・地域の軍事力をランク付けしている米「グローバル・ファイヤーパワー」(GFP)によれば、2017年度版の1位はアメリカで、北朝鮮は23位だった(同ランキングは、人員、兵器の種類、地理的要因などを含む50以上の要素を総合評価したもの)。

予備役を入れれば660万人

GFPによれば、米軍兵士は約130万人、予備役は99万9000人。北朝鮮軍は現役兵士が110万人だが予備役は550万人おり、合わせると世界4位の人数だ。

韓国駐留の米軍兵士は約2万8500人だから、もし突発的に米朝戦争が起きれば人員、物資とも北朝鮮軍に圧倒される。だが戦闘の主力は韓国軍だ。韓国軍兵士は約62万7500人、予備役も520万人いる。在日米軍4万5000人から直ちに増援を送る準備も整っている。

【参考記事】【北朝鮮情勢】米軍の地上侵攻はどんな戦争になるか

空軍力では、アメリカが北朝鮮を圧倒する。米軍には合計で約1万3760機の軍用機があるが、北朝鮮軍は1000機にも満たない。

米軍はさらに、戦車5884台、装甲戦闘車4万1062台、軍艦415隻(うち10隻は空母、2隻は新たに建造中)を保有している。6000億ドル近い国防費は世界最高。韓国に新型迎撃ミサイルTHAAD(高高度防衛ミサイル)を配備するなど、北朝鮮のミサイルを迎撃するミサイル防衛体制も整えている。

一方、北朝鮮が保有する戦車は5025台、装甲戦闘車は4100台、国防費も75億ドルと、アメリカに遠く及ばない。約967隻の船を保有するが、うち468隻は巡視船で空母は1隻もない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米大統領選資金集め、4月はトランプ氏が初めてバイデ

ビジネス

英GSK「ザンタック」、発がんリスク40年隠ぺいと

ビジネス

アストラゼネカ、シンガポールに15億ドルで抗がん剤

ビジネス

BMW、禁止対象中国業者の部品搭載した8000台を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 7

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    服着てる? ブルックス・ネイダーの「ほぼ丸見え」ネ…

  • 10

    「親ロシア派」フィツォ首相の銃撃犯は「親ロシア派…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 7

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 8

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 9

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中