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音声認識の仁義なき戦いが始まった

2017年12月20日(水)16時00分
ウィル・オリマス

今のところ、音声認識プラットフォームの市場は小さい。スマホのOSに比べたら取るに足りない。しかし急速に拡大している。スマホはもちろん、自動車にもスマートウオッチにも搭載され始めている。

スマホのOSではアップルのiOSとグーグルのアンドロイドが今も熾烈な戦いを続けているが、音声認識プラットフォームを制する者はそれ以上にユーザーの選択肢をコントロールできるようになる。

なぜか。そもそも音声認識のインターフェースは、何かを購入したり見たりするときにユーザーがアプリを選んだり画面をスクロールしたりする手間を省くことを目的にしている。ユーザーにできるのは「○○が欲しい」と言うことだけで、どこから買うかはメーカー側の初期設定で決まっている。

つまりユーザーには、商品の提供者やコンテンツの提供者を選ぶ権利はない。「声掛け」だけで何でもできる便利さと引き換えに、消費者は選択の自由(好きなサイトにアクセスする自由)を放棄することになる。

だから、全ての消費者を自社サイトに誘導したいアマゾンがグーグルを敵視するのは当然だ。グーグルが激しく反発するのも当然だ。いずれアップルがシリ搭載の素敵なAIスピーカーを売り出せば、ユーザーの囲い込み競争はもっと熾烈になる。

そう、今やインターネットの巨人たちはネット空間の自由を奪い、私たち消費者の選択肢を狭めるための競争に夢中なのだ。こんな競争が、私たちのためになるとは思えない。

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© 2017, Slate

[2017年12月19日号掲載]

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