最新記事

ブレグジット

英政府、臨時閣議でEU離脱協定案を承認 議会可決は不透明

2018年11月15日(木)09時28分

 11月14日、英国のメイ首相は欧州連合(EU)離脱を巡る合意草案が閣議で承認されたと明らかにした(2018年 ロイター/HENRY NICHOLLS)

英政府は14日の臨時閣議で、欧州連合(EU)からの離脱協定素案を承認した。メイ英首相は、メイ氏は今後、議会の承認に向けて取り組むことになる。

メイ氏は5時間にわたる閣議後、首相官邸前で「内閣として、政府が離脱協定素案と政治宣言の概要を承認すべきとの決定に至った」と説明。「この決定が英国全体の最善の利益だと強く信じている」と強調した。

離脱協定素案を巡り辞任する閣僚がいるかどうかは現時点で不明だが、メイ氏は、離脱派と親EU派双方の支持を取り付けることを期待している。ただ、EUからの完全独立を求める離脱派が待ち構える議会で承認されるかは依然不透明だ。

メイ氏は英議会での採決の日程を明らかにしていない。承認には、全650人の議会で約320人の支持が必要になる。

複数記者によると、この日の閣議で保守の離脱推進派は離脱協定案に激しい怒りを示した。そのため、メイ氏の不信任投票を呼び掛ける可能性があるという。

あるEU懐疑派議員は、閣議決定は全会一致ではなかったと指摘。また、ブレグジット反対派の多くは、EU加盟国としての恩恵を何も受けられない一方で、EU規定の順守が求められることへの懸念を示している。国民投票の再実施を求める声もある。

英国の将来像は見通せていない。円滑な離脱から草案拒否までさまざまな可能性がある。草案拒否なら首相辞任にもつながりかねず、合意なき離脱のほか、国民投票の再実施も考えられる。

離脱交渉では、英・北アイルランドとEU加盟国アイルランドの国境問題が最大の障害になってきた。

EUと英国が一致した離脱協定案では、移行期間終了後も新たな貿易合意が得られない場合に、アイルランド国境の管理厳格化回避に向けた必要な方策について2020年7月に決める計画。

メイ政権を支える北アイルランドの地域政党、民主統一党(DUP)は、北アイルランドを英国の他の地域と同じように扱わない案には反対するとしている。



[ロンドン 14日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20240521issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月21日号(5月14日発売)は「インドのヒント」特集。[モディ首相独占取材]矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディの言葉にあり

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米地銀NYCB、住宅ローン関連債権約50億ドルをJ

ビジネス

米インフレは依然高水準、FRBはまだやるべきことあ

ビジネス

ゲームストップ続伸、ミーム株熱再燃 空売り筋評価損

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、米株高を好感 半導体株上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プーチンの危険なハルキウ攻勢

  • 4

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 7

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 8

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中