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育児の悩みや反抗期は「うちの子」だけの問題じゃない

2019年1月23日(水)16時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

より細かい相談種別の年齢分布をとると、各年齢時点の危機の様相がもっとクリアーになる。2017年度の不登校相談は5153件だが、そのうちの1042件(20.2%)は13歳に関わるものだ。この年齢だけで、不登校相談の5分の1が占められている。<図2>は、8つの相談事由の年齢分布のカーブを描いたものだ。

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非行、不登校、いじめは13歳への集中度が高い。非行に至っては、全相談の4分の1がこの年齢で占められている。「危険な13歳」と言えるだろう。心身が大きく変化し、学校制度の上では小学校から中学校に上がる時期だ。それに対する戸惑いや心理的葛藤に起因する部分が大きい。小6から中1にかけて問題行動が激増する現象は「中1ギャップ」といわれ、その解消に向けた取り組みもなされている。育児・しつけの相談は、2~3歳に集中している。

児童相談の統計で見る限り、大変な年齢は2~5歳と13~14歳のようだ。前者の時期では「育児・しつけ」関連、後者の時期では「問題行動」関連の苦労が大きい。先にも述べたが、前者は「第1次反抗期」、後者は「第2次反抗期」に相当する。

第1次反抗期では、自我が芽生え自由に体を動かせるようになった子どもが、親への全面的な依存を脱し、自分のやりたいことをしようと思うようになり、それが親への反抗となって表われる。

第2次反抗期は親離れを志向し始める時期で、親を否定し、場合によっては親と激しく衝突する。親のいうことを無視する、暴言を吐く、さらには暴力を振るうなど、反抗の形態もエスカレートする。上記のデータは、このような一般的な見解と合致している。

しかし、反抗もやがて終息する。事実、非行相談はピークを過ぎると潮が引くように急減する。子どもが反抗期を迎えると親は戸惑うが、子どもが自我を確立し、大人になるために必要な道程でもある。わが子だけが異常と思うのは間違いだ。この時期の苦労は多くの家庭が経験することで、嵐はやがては過ぎ去り、再びやってきては、また過ぎ去る......。こうした長期的な展望がないと、現状に対する焦りや苛立ちばかりが高じ、虐待や家庭内暴力のような病理現象も起きやすくなる。

「わが子」の目先の問題に翻弄されるだけでなく、時には一歩引いて「鳥の目」を持つことも必要だろう。マクロな統計はこういう時に役立つ。

資料:厚労省『福祉行政報告例』

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