最新記事

日本社会

夏の熱中症より多い、屋内でも起こる冬の「凍死」にご用心

2019年3月6日(水)16時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

夏の熱中症に比べて冬場の凍死はあまり注目されていない Nick_Thompson/iStock.

<冬場の凍死の死者数は、実は夏場の熱中症による死者数より多い。凍死の多くは、屋外ではなく屋内で高齢者が低体温症になってしまうケースと見られる>

ここ数年、夏の異常な暑さによる熱中症に注意が払われているが、冬場の凍死はあまり注目されていない。前者は異常な高温、後者は異常な低温にさらされることで起きる。

厚労省『人口動態統計』の詳細死因分類に、「自然の過度の高温への曝露(X30)」、「自然の過度の低温への曝露(X31)」というカテゴリーがある。前者は熱中症、後者は凍死による死亡と見ていい。

この数字を拾うと、2017年の熱中症死亡者は635人、凍死の死亡者は1371となっている。数としては凍死の方が多く、倍以上ある。こういうマイナーな死因は年による変動が大きいが、2008~17年の10年間の合計をとると熱中症が8041人、凍死が1万1002人で、やはり凍死の方が多い。

統計の上では凍死が多いのに、注目される度合いは熱中症の方が高い。熱中症は、全ての人に関わる事象だと認識されているからだろう。凍死は、雪山で遭難するとか、泥酔して路上で寝込むとか、当人の過失による部分が大きいと思われている。

それならば凍死者には若者が多いはずだが、どうなのか。2017年の死者数の年齢カーブを描くと<図1>のようになる。

maita190306-chart01.jpg

予想に反して、凍死は高齢者に多い。全体のほぼ9割が60歳以上の高齢者だ。無茶をしがちな若者はわずかしかいない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日本製鉄、USスチール買収「強い意志でできるだけ早

ワールド

プーチン氏「ロシアを脅かすこと容認せず」、対独戦勝

ワールド

中国輸出、4月前年比+1.5% 輸入と共にプラス転

ワールド

お知らせ=重複記事を削除します
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 5

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 6

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 7

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 8

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 9

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 10

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中