最新記事

スコットランド

「スコットランド独立」は得策か

British Election Impact: If UK Leaves Europe Could Scotland Depart UK?

2019年12月17日(火)15時20分
パラシュ・ゴシュ

スコットランドはEU離脱への反対が強く、2016年の国民投票では62%がEU残留を支持した――イングランド、ウェールズと北アイルランドよりも多い割合だ。

スコットランドの独立を支持する人々は、EU離脱はスコットランド経済に大きなダメージを与えると主張する。

とくに高齢化が進むスコットランドには(2041年までに年金受給年齢の67歳に達する人が26万5000人増える見通しであるのに対して、労働年齢人口は3万8000人しか増えない見通し)、EUなどから移住してくる若い労働者が必要だ。しかしEUを離脱すれば移民は減る見通しだ。スコットランド政府は2018年、イギリスがEUから離脱すれば「スコットランド市民1人あたり年間2300ポンド収入が減り、8万の雇用が失われることになる」と警告を発した。

実際に独立した場合、おそらくスコットランドはEU加盟を目指すだろう。だが通常、そのプロセスには非常に長い時間がかかる。小国の場合は特にそうで、たとえばアルバニアは2009年に正式にEU加盟を申請したが、いまだに承認されていない。

独立後のスコットランドは、経済的な問題にも直面するだろう。スコットランド経済は北海の石油(北海油田)に大きく依存しているが、北海での石油開発は既に環境保護活動家たちからの批判に直面しており、石油の掘削を減らすよう求める運動が起こっている。

反対派:経済財政はイギリス頼り

さらに大きな問題は、スコットランドが経済的にイギリスに従属していることだ。2017年にはスコットランドの輸出の60%がイギリス向けだった。またスコットランド自治政府の2018年の財政赤字はGDPの7%に相当する126億ポンドにのぼったが、それを補填するために中央政府から補助金を受けている。

スコットランド市民の中には、独立に断固反対の声もある。

労働党政権時代の元首相でスコットランド出身のゴードン・ブラウンは、2014年の住民投票の際にもスコットランドの独立に強く反対を表明。最近、エジンバラで開かれた集会でも、独立後のスコットランドの先行きは暗いと警告した。

「EU離脱もスコットランドの独立も、我々が直面する経済的な問題の解決には一切役に立たない」とブラウンは語った。「だがそれよりも重要な問題は、対立を煽るようなナショナリズムを支持するのかということだ。私はEU離脱を掲げるナショナリズムも、スコットランドのナショナリズムも、危険だと思う。どちらも、存在しない敵をつくり出して対立する構造を生むからだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中