最新記事

新型コロナウイルス

インドネシアのコロナ感染死者数、公式統計に疑問 実際は政府発表の約5倍という報道に衝撃

2020年7月10日(金)20時15分
大塚智彦(PanAsiaNews)

インドネシア保健省の発表では7月に入ってからの新型コロナウイルスによる死者は1日あたり数十人というが…… REUTERS/Willy Kurniawan

<新型コロナの感染者・死者ともに東南アジア最多となっている国が、実はその数倍の死者を出しているという......>

新型コロナウイルスによる感染拡大が一向に収まらず、右肩上がりの感染者数、感染死者数の増加が終わりのないかのように続いているインドネシアで、衝撃的な数字が報道された。

7月9日雑誌「テンポ」の電子版が「もてあそばれるデータ」と題する記事で、毎日午後3時過ぎに保健省が公表している過去24時間の新規感染者・死者と累計の感染者・死者数について「実態を反映していない」と指摘したのだ。

そして世界保健機構(WHO)の基準に従った集計方法によれば、保健省が公表している累計感染死者数は過小数字で、実際の死者数は「保健省発表の約5倍になる」という衝撃的なニュースを伝えたのだった。

同誌によると、インドネシア政府部内には保健省が統括する統計収集チームとは別に「コロナ対策本部」が設置されており、双方がまとめる数字に大きな差異が生じているというのだ。

感染症の専門家などで構成される「コロナ対策本部」は死者の数字をWHOが採用している基準に基づいて独自集計しているため統計結果の数字が異なっている、という。

保健省「陽性の感染死者のみカウント」

保健省の統計データは、その人物が死亡した時点でコロナ検査で陽性と判定されていたかどうかを判断の基準にしている。

つまり保健省は検査結果で陽性判定が出ていた感染者が死亡したケースに限って「感染死者」としてカウントするという方法をこれまで採用している。

これに対し「対策本部」はコロナウイルス感染に酷似した症状で死亡した患者、さらにコロナ感染の疑いがあるため監視下においているものの陽性判定がでる前に死亡した患者も「感染死者」として計上する方法を採用している。

これは患者の症状が重症化、悪化する前に全ての患者がコロナ検査を受ける訳ではないという状況を勘案すれば、「対策本部」の統計の方がより実数に近い「感染死者数」となることは誰の目にも明らかといえる。

こうした「対策本部」の統計数字はWHOの基準に従っているということで国際的な数字の比較検討にも使える「グローバル・スタンダードに基づく統計データ」となる。


【関連記事】
・東京都、新型コロナ新規感染は昨日を上回り243人 2日連続200人台は初の事態
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・科学者数百人「新型コロナは空気感染も」 WHOに対策求める
・韓国、日本製品不買運動はどこへ? ニンテンドー「どうぶつの森」大ヒットが示すご都合主義.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インフレ率低下、持続可能かの判断は時期尚早=ジェフ

ワールド

ウクライナ、北東部国境の町の6割を死守 激しい市街

ビジネス

インフレ指標に失望、当面引き締め政策が必要=バーF

ビジネス

物価目標達成に向けた確信「時間かかる」=米アトラン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『悪は存在しない』のあの20分間

  • 2

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 5

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 6

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    9年前と今で何も変わらない...ゼンデイヤの「卒アル…

  • 10

    「親ロシア派」フィツォ首相の銃撃犯は「親ロシア派…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 4

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中