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中国大手IT企業の独禁法違反処分はTPP11参加へのアピール

2020年12月16日(水)08時00分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

アリババが開催した「独身の日」セール(11月11日) Bobby Yip-REUTERS

日本ではアリババなどIT大手3社の独禁法違反処分を中国政府の民間企業への介入と報道する傾向にあるが、実はこれはTPP11参加に向けて中国も国際標準に近づきつつあることへのアピールとみなすべきだろう。

独禁法違反で処分を受けた中国大手IT企業3社

中国政府の「国家市場監督管理総局」は12月14日、以下の中国大手IT傘下の企業に対して独占禁止法(以後、独禁法)と「経営者集中申請基準に関する国務院の規定」に違反しているとして、それぞれ罰金50万元(約800万円)を科す決定を下した。

1.「アリババ投資」は2017年に小売企業「銀泰商業集団」を買収した。しかし出資比率を73.79%に引き上げる前に当局の承認を得ていない。

2.テンセント傘下の電子書籍部門「閲文集団」は2018年に新麗傳媒を買収した。しかし事前に当局の承認を得ていない。

3.S.F.エクスプレス(順豊)の子会社「豊巣ネットワーク(スマート宅配運営企業)」は2020年5月に中郵智递公司を買収。豊巣ネットワークは中郵智递の株を100%持ちながら、中郵智递の株主が豊巣ケイマン株を28.68%購入しているが申告していない。

これらの処分に対して日本では「中国政府が民間企業にまで介入し始めた」という受け止め方の報道が多い傾向にあるが、中国のネットでは、まるで正反対だ。

●いいねぇ!やっとネット業界にもメスを入れたのか!

●通信大手は一人でボロ儲けして、俺たちのポケットから金を奪っていくばっかりだ。もっと早く罰するべきだった。

●「たかだか50万元?」とも思うが、まあ、政府がようやくネット業界にも手を付けるよっていうシグナルだろうから、許してやるか。

●もっとやれ!

......といった感じの言葉に溢れているのだ。

中国では独禁法は2007年に制定され2008年から施行されているが、これまでネット業界は独禁法対象になったことがなかった。

なぜなら中国は国土が広大なので、ネット通販は中国経済を押し上げる非常に大きな業態の一つだったからだ。また民間企業を推進していることをアピールする意味でも、中国政府にとっては好ましい存在だった。

しかし世界的に見てもGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)よりも多くのビッグデータを持つに至ったBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)などの独占ぶりは横暴とも言えるほどで、庶民の不満は溜まっていた。

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