最新記事

中国

ハイテク北京冬季五輪と中国の民間企業ハイテク産業競争力

2022年1月25日(火)07時00分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

新疆ウイグル自治区の面積は日本の国土の4倍強あるが、その内の4分の1を太陽光パネルやミラー塩タワー(参照:1月5日のコラム<テスラEV「新疆ウイグル自治区ショールーム新設」と習近平の狙い>)で埋めたとしても面積的には余裕だ。つまり日本全土が太陽光パネルとミラー塩タワーで埋められたような状況を新疆ウイグル自治区で形成し、そのエコ電力を24時間稼働という運送体制で中国全土に配送していくという構想なのである。

アメリカは昨年6月に新疆ウイグル自治区の太陽光パネル企業5社に対して制裁を科しているが、習近平は中国国内の電力不足を「太陽光発電+夜間用ミラー塩タワー発電」で補っていこうとしているので、アメリカから制裁を受けても「国家エネルギー安全保障」としては十分であることを国際社会、特にアメリカに見せたい。

これは、1月20日のコラム<中国が崩壊するとすれば「戦争」、だから台湾武力攻撃はしない>に書いたように、万一にもアメリカに海上封鎖をされた場合のリスク回避でもある。

中国のハイテク産業競争力

では、中国のハイテク産業の競争力はどれくらいあるのか?

何を指標にとって比較するかによって、見える風景が多少変わってくるが、ここでは我が国の文部科学省管轄下の科学技術・学術政策研究所による報告書「科学技術指標2021」(以下、報告書)を基に考察してみよう。

これは2021年8月7日に、主要国の科学技術活動を客観的・定量的データに基づき体系的に分析した報告書で、分析するための論文データはクラリベイト社の書誌データを用い、特許関連指標のうちパテントファミリーデータに関しては欧州特許庁の書誌データを用いている。また国際比較や時系列比較に関してはOECDデータに準拠するものが多いとのこと。

それらによれば、自然科学系の論文数で、中国が初めてアメリカを上回って世界1位になっただけでなく、他の論文に引用された回数が多く質が高いとされる論文の数(Top10%補正論文数)においても、中国が1位に上昇したことがわかった。以下に示すのは調査報告書に掲載されているグラフだ。

endo20220124223001.jpg
文部科学省管轄下の科学技術・学術政策研究所の報告書「科学技術指標2021」より

右端にある「Top1%補正論文数シェア」ではアメリカに僅差で及ばないものの、左端にある「論文数シェア」と真ん中にある「Top10%補正論文数シェア」では、中国は世界1位になっていることがわかる。

論文は主として大学や研究機関の研究者が書くことが多い。したがって必ずしも、これを以てハイテク産業競争力を論じることは出来ない。

ハイテク産業に関しては、特許数などを指標の一つとして挙げることができるが、なんと特許(パテント)に関しては、日本が中国を遥かに上回っているのである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ヘイリー氏を副大統領候補に検討との報道

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、3週連続減少=ベーカー

ワールド

焦点:中国農村住民の過酷な老後、わずかな年金で死ぬ

ワールド

アングル:殺人や恐喝は時代遅れ、知能犯罪に転向する
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの文化」をジョージア人と分かち合った日

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア…

  • 6

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 7

    「未来の女王」ベルギー・エリザベート王女がハーバー…

  • 8

    「私は妊娠した」ヤリたいだけの男もたくさんいる「…

  • 9

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 8

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中