最新記事

中国

モスクワ便り──ウクライナに関するプーチンの本音

2022年2月14日(月)12時09分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

なおプーチンは、2月6日には南オセチア共和国のビビロフ大統領との電話会談が控えているだけでなくトルコのエルドアン大統領へのメッセージ送付もあり、2月7日にはフランスのマクロン大統領との対面会談もあるので、習近平は気を利かせて4日の内に宴会を開き、開会式参加後すぐにプーチンが帰国できるよう便宜を図ったのだった。

クレムリンのインサイダー情報

その後のプーチンとモスクワの情況に関して、モスクワにいる、クレムリンに近い友人を取材したところ、わざわざクレムリン関係者に接触してくれて、豊富な情報を提供してくれた。その中には、公けにしてはならないという情報も含まれていたので、それを除いたインサイダー情報を、可能な限りご紹介したい。

1.北京から帰国したプーチンは大変気分が高揚した様子で、かなり満足のいく北京訪問だったようです。

2.フランスのマクロンとの面談は、ロシア側にとっては一定の意味があり、5時間にもわたって会談が成されました。大半の時間はプーチンによる情報分析、ロシアの立場のインプットであったようです。英米とは何を話しても、議論にすらならない低レベルの会談にしかならないので、知性エリートのマクロンとは会話が成立したとのことです。

3.ロシアは、最早、米国との間では、いわゆる裏ルートとか秘密のホットラインが長年存在せず、本音で議論ができない相手と見做(みな)しており、この状況は誰が大統領になっても変わらないとの冷徹な見方の上に立って国際政治を考えているので、マクロンがここで登場してくれたのはありがたい話。もともと仏露は友好的な関係にありますし。マクロンに各種情報や分析をインプットすることによって、米国や欧州主要国へロシアの本音のようなものを伝えてくれる役割が期待できるのではないかと考えています。

4.英米とはこういう会話ができないし、裏ルートもない。一方、ドイツとフランスは長年培ったルートは残っており、ドイツに関してはノルド・ストリーム2を産業界は簡単に諦めることはないだろうから、まだ議論や交渉の余地はあるとロシアは考えています。

5.バイデン政権はロシアにとっては、(トランプ政権に比べると)よりましな政権であり、彼(バイデン)のメンツを潰すことはロシアとしても考えてはいません。彼(バイデン)は、とにもかくにも、トランプ時代の末期のように対話もなしに制裁をしたり、協定を破棄したりということはなく、交渉にはならないことが多いが、少なくとも対話が可能であり、米国が何を考えているかは、(トランプ時代と比べると)より分かり易い。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

バイデン大統領、対中関税を大幅引き上げ EVや半導

ワールド

再送-バイデン政権の対中関税引き上げ不十分、拡大す

ワールド

ジョージア議会、「スパイ法案」採択 大統領拒否権も

ビジネス

米ホーム・デポ、売上高が予想以上に減少 高額商品が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プーチンの危険なハルキウ攻勢

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 10

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中