最新記事

宇宙開発

「驚異的かつ前例ない」宇宙で発電しマイクロ波で地上へ送電...折り紙に着想のプロジェクト、試作機打ち上げ

2022年12月6日(火)16時40分
青葉やまと

宇宙で太陽光発電を収集し、マイクロ波でエネルギーを地球に送信する...... Credit: Caltech

<宇宙で発電し、地上へ送電する。SF世界のようなプロジェクトのプロトタイプが打ち上げられる>

宇宙空間で効率良くソーラー発電を行い、得られた電力をマイクロ波の形で地上に届ける。そんな発電方式の研究が進んでいる。課題のひとつであるパネルの小型化は、折り紙に着想を得た技術で解決したようだ。

現在は地上でのソーラー発電が普及しているが、効率という意味では限界がある。曇りや雨などの天候に出力が左右されやすいほか、夜間はほぼ発電ができない。

そこで、雲を突き抜けた宇宙空間でソーラー発電を実施し、常時フルパワーで発電・送電する技術に期待が寄せられている。科学ニュースサイトの「サイテック・デイリー」は、地上と比較して最大8倍の発電効率が期待できるとしている。

得られた電力をマイクロ波で送電することから、この方式は「マイクロ波発電」または「宇宙太陽光発電」と呼ばれる。マイクロ波発電は人気都市シミュレーションゲームの「シムシティ」でも、未来の発電技術として登場していた。

研究が実を結べば、未来の夢物語だった技術が実現することになる。今年12月までにプロトタイプが完成し、宇宙空間への打ち上げが実施される予定だ。

3km四方の広大な発電施設、宇宙空間に展開

研究を行なっているのは、米カリフォルニア工科大学(カルテック)だ。工学・応用科学学科の研究者であるハリー・アトウォーター氏らがプロジェクトを主導している。

研究チームは発電システムの基本パーツとして、約10センチ四方のソーラーパネルのセルを想定している。地上で一般的に使われている太陽発電パネルに採用されているのとほぼ同じ大きさのセルだ。

これを数十万枚という規模でつなぎ、およそ3km四方の巨大パネルを完成させる。土地に限りのない宇宙空間であることを生かし、広大な集光面を確保する計画だ。

地上の昼夜を問わず発電を続け、得られた電力はマイクロ波に変換して地球にワイヤレス送電する。地上側では受信施設があれば電力を得られるため、送電網から切り離された遠隔地への送電手段としても期待されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中