最新記事

健康

40歳以上ですか? ウエイトトレーニングは筋肉を強く保つだけではない、との研究結果

2023年1月5日(木)17時02分
松岡由希子

筋肉量は40歳を迎える前から減少しはじめる...... milan2099-iStock

<コペンハーゲン大学の研究チームは、健康な高齢男性を対象に、運動強度の高いレジスタンス運動が筋肉とニューロンの接続を強化するのかについて調べた......>

私たちの筋肉量は40歳を迎える前から減少しはじめる。加齢に伴う筋力量の減少は、運動ニューロン (体に動くように命令する脳と脊髄の細胞) が分解するときに起こる筋繊維の減少が大きく関与しており、止められないが、大幅に遅らせることは可能だ。

高齢になっても、筋肉に一定の負荷をかけて筋力を鍛える「レジスタンス運動」によって、筋肉とニューロンの接続を強化し、脊髄の運動ニューロンを保護する。これが、身体の正常な機能に不可欠だ。

デンマーク・コペンハーゲン大学の研究チームは、健康な高齢男性を対象に、運動強度の高いレジスタンス運動が筋肉とニューロンの接続を強化するのかについて調べた。その研究結果は2022年7月8日付の「アメリカンジャーナル・オブ・フィジオロジー:セル・フィジオロジー」で掲載されている。

「65歳や70歳でもけして遅すぎることはない」

この研究では、健康な高齢男性38人を実験群として16週間にわたり週3回、高強度のウエイトトレーニングを実施し、ウエイトトレーニングをしない健康な高齢男性20人の対象群と比較した。なお、実験群、対象群のいずれも、平均年齢は72歳であった。

実験群では、トレーニング期間の前後とその中間の8週間目に筋生検を採取し、神経筋接合部の安定性に関するバイオマーカーなどを解析した。その結果、8週間目には身体の健康状態と筋肉の大きさが顕著に向上していた。

研究論文の筆頭著者でコペンハーゲン大学のカスパー・ソンデンブロ博士研究員は、「この研究結果は、たとえ高齢期になってからウエイトトレーニングを始めたとしても、違いが現れることを示すものだ」とし、「もちろん始めるのは早いほどよいが、65歳や70歳でもけして遅すぎることはない」と説いている。

ウエイトトレーニングが神経系との接続を強化するメカニズムについてはまだ解明されていない。研究チームでは今後、このテーマについてさらなる研究をすすめる方針だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ユニバーサル、TikTokへの楽曲提供再開へ 新契

ビジネス

海外旅行需要、円安の影響大きく JAL副社長「回復

ビジネス

2日に3兆円超規模の円買い介入の可能性、7日当預予

ワールド

OECD、英成長率予想引き下げ 来年はG7中最下位
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中