最新記事

感染症

新型コロナ、6月比40%増と感染急拡大 オミクロン株の新派生型「EG.5 エリス」の特徴とは

2023年8月15日(火)19時35分
米疾病対策センター(CDC)

米国や欧州、アジアで新型コロナウイルスの感染者や入院患者が増加してきている。ジョージア州アトランタで2014年撮影(2023年 ロイター/Tami Chappell)

米国や欧州、アジアで新型コロナウイルスの感染者や入院患者が増加してきている。公衆衛生当局が指摘するのは、2021年11月に初めて登場したオミクロン株の新たな派生型「EG.5」(通称エリス)の存在だ。

◎EG.5の正体

世界保健機関(WHO)はEG.5を「注目すべき変異株(VOI)」に指定した。感染力や重症化率が他の変異株より高い可能性があるため、警戒が必要なことを意味している。

ただ、WHOは現段階では公衆衛生上の脅威がより大きいとはみなしておらず、EG.5と重症化率上昇の間に、直接の因果関係を証明する要素はないとしている。

◎感染スピード

WHOによると、EG.5は今月8日時点では50カ国以上で確認されていた。米国内の派生型としては最も感染者が多く、急速に感染が広がっている。米疾病対策センター(CDC)の推計に基づくと、現在の新型コロナウイルス感染者に占めるEG.5感染者の割合は約17%だ。

CDCのデータを見ると、新型コロナウイルス関連の入院患者は、直近の底だった6月に比べて40%余り増えている。オミクロン株流行がピークを迎えた昨年1月の入院患者よりは、なお90%以上少ない。

米国全土の下水から検出された新型コロナウイルスの量や、治療薬「パクスロビド」の週間処方件数は、いずれも水準自体がまだ低いものの、過去1カ月で大幅に増加した。

◎新しいワクチンの接種可能時期

ファイザー/ビオンテック、モデルナ、ノババックス各社は、「XBB.1.5」を含む派生型を対象に改良したワクチンを製造している。

EG.5はXBB.1.5と似ているが、このワクチンが標的とするスパイクタンパク質に1カ所の変異が見られる。

XBB.1.5は昨年終盤に出現し、CDCの推計では、8月5日時点でなお新型コロナウイルス感染者の10%以上を占めている。CDCのコーエン所長は最近のインタビューで、米国で9月第3週か第4週までには新しいワクチンが幅広く利用されるようになるとの見通しを示した。

コーエン氏は、EG.5向けの特別な対策は示していない。ただ「ウイルスは変異しているが引き続きワクチンや治療薬に反応し、検査で抽出される。したがってわれわれが持つあらゆる手段は依然として変異にも有効に作用する」と述べた。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB「市場との対話」、専門家は高評価 国民の信頼

ビジネス

焦点:利下げに向かう欧州、動けないFRB 乖離拡大

ビジネス

現状判断DIは前月比-2.4ポイントの47.4=4

ビジネス

アングル:中国、人民元安容認は一時的か 長期化で消
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 2

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽しく疲れをとる方法

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 5

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカ…

  • 6

    上半身裸の女性バックダンサーと「がっつりキス」...…

  • 7

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 7

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 10

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中