最新記事

原発

東電、福島第1原発処理水の海洋放出を開始 完了まで約30年かかる見通し

2023年8月24日(木)14時55分
福島第1原子力発電所の作業員たち

東京電力は24日、福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出を開始した。写真は福島第1原子力発電所の作業員たち。South China Morning Post / YouTube

東京電力は24日、福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出を開始した。廃炉を進める上で課題となっていた処理水タンクを減らし、廃炉作業を進める。処理水放出に伴う風評被害対策も含め、福島の復興を急ぐ。これに対し中国は同日、海洋放出を非難し、日本の水産物の輸入を全面停止すると発表した。

東電は、最初に放出する処理水を海水で希釈、トリチウム濃度が基準値の1500ベクレル/リットルを下回っていることを確認し、放出を開始した。

2023年度中は、4回に分けて約3万1200トン放出する。1回目は17日間で7800トンを放出する。放出完了までは30年程度かかる見通し。

現在の技術ではとり切れないトリチウムが残った処理水について、東電は敷地内のタンクに貯蔵しているが、24年2―6月ごろに満杯になる見込み。原発敷地内のタンクは廃炉作業を進める上で障害になるため、21年4月に政府は海への放出を決定した。

政府は福島第1原発の処理水放出時期について、今年の春から夏ごろを見込むとしていた。国際原子力機関(IAEA)が7月、処理水放出について国際的な安全基準と合致しているとの報告書を発表。岸田文雄首相は今月初め、漁業関係者との対話で「信頼関係は少しずつ深まってきている」との認識を示した。

原発処理水に関しては、2015年に経産省と東京電力が福島県漁連に対し、関係者の理解なしにはいかなる処分も行わないと伝えていた。全国漁業協同組合連合会(全漁連)の坂本雅信会長は22日、「漁業者・国民の理解を得られない海洋放出に反対であることはいささかも変わらない」とする声明を発表した。

海洋放出を受け中国外務省は声明で「国境を超えた影響を伴う原子力の安全性に関する重大な問題であり、日本だけの問題ではない」と非難。同国税関は、日本の水産物の輸入を同日から全面停止すると発表した。

香港政府も22日、輸入規制を24日から発動するとし、海洋放出を実施した場合、10都県からの水産物の輸入を禁止すると表明している。

東電は午後3時ごろに、放出地点の近場の10拠点で海水を採取し、調査する。環境省も25日朝、周辺海域で海水を採取し、放射性物質濃度の分析を行う。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

機械受注3月は前月比2.9%増、判断「持ち直しの動

ビジネス

あと数カ月インフレ鈍化を確認する必要=米クリーブラ

ビジネス

日経平均は続落で寄り付く、米エヌビディア決算前に持

ワールド

プーチン氏、死去のイラン大統領称賛 下院議長に弔意
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「目を閉じれば雨の音...」テントにたかる「害虫」の大群、キャンパーが撮影した「トラウマ映像」にネット戦慄

  • 4

    9年前と今で何も変わらない...ゼンデイヤの「卒アル…

  • 5

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 6

    服着てる? ブルックス・ネイダーの「ほぼ丸見え」ネ…

  • 7

    高速鉄道熱に沸くアメリカ、先行する中国を追う──新…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    「韓国は詐欺大国」の事情とは

  • 10

    中国・ロシアのスパイとして法廷に立つ「愛国者」──…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 10

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中