最新記事
米中軍事

風雲急、中東に展開する米空母打撃群と最新鋭の中国海軍はどちらが強いか

China's Middle East Warship Flotilla Compared to US Carrier Strike Groups

2023年10月26日(木)19時51分
エリー・クック(本誌安全保障担当)

スエズ運河を航海中の米空母「ドワイト・アイゼンハワー」(2021) Cameron Pinske/U.S. Navy/REUTERS

<海軍力の増強と中東での覇権拡大を進める中国海軍が、中東情勢緊迫で派遣された2つの米空母打撃群とあい見える時>

10月初めに中東で新たな戦争が勃発し、東地中海は風雲急を告げているが、この海域では米軍のみならず中国も軍事的プレゼンスを維持している。ただ「リーチ(軍事作戦を展開できる到達範囲)では、中国軍は米軍に遠く及ばない」と、アメリカがさらなる資源をこの紛争地域に送り込むなかで、軍事専門家が本誌に語った。

【動画】その距離わずか5メートル...中国戦闘機によるカナダ哨戒機への「異常接近」

 
 
 
 

10月7日にパレスチナの武装組織ハマスがイスラエル領内に大規模な奇襲攻撃をかけて以来、アメリカはこの地域における軍事的プレゼンスを大幅に拡大してきた。7日以降イスラエルはハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザに連日空爆を行い、地上侵攻の準備を着々と進めている。対してハマスはイスラエル各地をロケット弾とミサイルで猛攻。今なお多数のイスラエル人を人質としてガザ地区内に拘束しているとみられる。

米軍は2群の空母打撃群を東地中海に移動させ、それに伴いイスラエルにTHAAD(高高度防衛ミサイル)砲兵隊を配備し、「地域全体で米軍部隊の防護を強化するため、防空システムのパトリオットを運用する大隊を追加派遣」したと、ロイド・オースティン米国防長官は発表した。米軍の各部隊には派遣準備命令が下り、10月24日にはF16戦闘機の飛行隊が現地入りした。

敵対勢力に対する強固な意思表示

アメリカはまず空母「ジェラルド・フォード」を中心とする空母打撃群を東地中海に移動させ、続いて空母「ドワイト・アイゼンハワー」率いる空母打撃群にも「長期」の派遣でこの海域に向かうよう命じたと、米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー報道官が発表した。

「米軍はこの地域において、使用可能な相当量の火力を保持することになる」と、独立系の軍事専門家パトリック・フォックスは空母打撃群の派遣前に本誌に語った。

空母打撃群の派遣により、米軍は「世界中どこでも、到着後すぐに、単独で作戦を開始」できると、24日の記者会見で米国防総省の高官は述べた。空母打撃群を「どこかに派遣する時、われわれは(同盟国に支援の意思を伝えるとともに)、敵対勢力に極めて強固な(牽制の)メッセージを意図的に送ろうとしている」と、国防総省幹部らは付け加えた。

だが中東でプレゼンスを誇示しているのは米軍だけではない。中東諸国がイスラエルとハマスの戦闘激化を固唾を飲んで見守る中、中国海軍の艦船もペルシャ湾とオマーン湾を航行している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米の武器供給停止は誤ったメッセージ、駐米イスラエル

ビジネス

カナダ金融システム、金利上昇対応と資産価格調整がリ

ワールド

イスラエル首相、強硬姿勢崩さず 休戦交渉不調に終わ

ビジネス

Tモバイルとベライゾン、USセルラーの一部事業買収
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 2

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽しく疲れをとる方法

  • 3

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 4

    上半身裸の女性バックダンサーと「がっつりキス」...…

  • 5

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 6

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    自民党の裏金問題に踏み込めないのも納得...日本が「…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中