コラム

日本でもAmazon Echo年内発売?既に業界は戦々恐々

2017年01月30日(月)15時00分

<一度使えばスマホには戻れなくなる、といわれる音声コマンドの大ヒット・デバイス、Amazon Echo(エコー) がいよいよ日本上陸!? 搭載されている音声認識技術 Alexa(アレクサ)に対応する家電や自動車も続々と現れて、これからは音声入力が生活の主役になりそうだ>

 アメリカで爆発的人気のスピーカー型音声アシスタント「Amazon Echo」。業界関係者によると、日本でも年内に発売になる可能性が高い。スマートフォン全盛時代に終止符を打つ可能性があると言われるほどの大型ヒットデバイスだけに、まだ噂の段階ながら戦々恐々とする業界関係者が多い。

ボイスファーストが強み

 Amazon Echoでどんなことができるのか。イメージ的には、スマホのデジタルアシスタントGoogle NowやiPhoneのsiriのようなもの。違いは、ボイスファーストだというところ。ディスプレイを搭載していないので、音声だけで事が足りるように徹底的に考え抜かれていることだ。(関連記事:ボイスの時代がそこまできた。モバイルファーストを思い出せ

 実際にどのようなことができるのかは動画を見てもらうのが分かりやすいが、家庭内だとスマホをポケットから出す手間もなく、音声だけで音楽をかけたり、天気予報などの情報を得たりすることが可能だ。

 技術的に大きな特徴は2つ。1つは、7個のマイクが搭載され、部屋の中の音声を正確に拾うことができること。もう1つは、1秒以内にレスポンスが返ってくることだ。

 友人のロボット事業者は「いろんなロボットのマイクを見てきたが、Amazon Echoはダントツにすばらしい。指向性があるというのか、発声者の声を正確に拾ってくる」と語っている。

 またレスポンスが1秒以内になっているのは、CEOのジェフ・ベゾス氏のこだわり。Echoの開発を始めたころは、レスポンスに数秒かかるのが普通。世界最先端の研究でようやく2秒前後のレスポンスタイムを記録したばかりだった。試作機を見たベゾス氏は研究者たちに1秒を切るように檄を飛ばした。研究者たちは無理だと反論したが、ベソス氏は首を縦に振らなかったという。

 ベゾス氏の執拗な命令を受けながら、研究者たちはAIの新手法Deep Learningを使ってレスポンスタイムの縮小に取り組んだ。そしてようやく1秒を切ることができ、製品出荷にこぎつけたのだという。

【参考記事】深い感動を導くアマゾンの音声AIアシスタント+コンテンツの可能性

スマートホームのハブ確定

 とはいうもののAmazon Echoの最大のすごさは、そうした技術面にあるわけではない。実は米国では、Echoに搭載されている音声技術Alexaが多くのサードパーティに採用され、機器連携の事実上の業界標準になりつつある。そのことが最もすごいことだ。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英インフレ率目標の維持、労働市場の緩みが鍵=ハスケ

ワールド

ガザ病院敷地内から数百人の遺体、国連当局者「恐怖を

ワールド

ウクライナ、海外在住男性への領事サービス停止 徴兵

ワールド

スパイ容疑で極右政党議員スタッフ逮捕 独検察 中国
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバイを襲った大洪水の爪痕

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    冥王星の地表にある「巨大なハート」...科学者を悩ま…

  • 9

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 7

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story