コラム

アマゾン・エコー vs LINEクローバの戦いはこうなる

2017年04月12日(水)20時20分

海外では日本より一足早く発売されたAmazon Echo Peter Hobson-REUTERS

<AmazonとLINEがボイス・ファースト・デバイスで新しい時代の扉を開けた。今後注目されるのは、ユーザー同士を音声のソーシャルで繋げるコミュニケーション機能だ>

スマホの次は、ボイスの時代。米国で絶好調のAmazon Echoが日本で発売される前に、LINEがAIプラットフォーム「Clova(クローバ)」を発表。Amazonに真正面から対抗することを決めた。ボイス時代のハブとなるボイス・ファースト・デバイスは、一家に一台になるという予測もあるが、僕は複数のデバイスが共存可能だと思う。複数のプレーヤーが共存できるほど、ボイス・ファースト・デバイスは、広範囲に影響力を行使するほどになる。そう考えている。

ボイス・ファースト・デバイスとして世界で市販されているのは、今のところAmazon EchoとGoogle Homeの2台だけ。米調査会社VoiceLabsによると、両方の出荷台数の合計は、2015年が170万台、2016年が650万台。2017年には新規参入もあって、ボイス・ファースト・デバイスの出荷台数が、一気に2450万台に伸びると予測されている。今年の年末にはトータルで3300万台のボイス・ファースト・デバイスが、世の中に存在することになる。

ボイス出荷台数.png
出典VoiceLabs


そのデバイス上で動くボイスアプリやサード・パーティ・デバイスも、既に1万個以上あると言われている。多いのは、ニュース、ゲーム、教育関連のアプリ。だが今のところ、マネタイズに成功しているアプリはまだない。

ボイスアプリの種類.png
出典VoiceLabs

VoiceLabsは、今年中にAmazon EchoやGoogle Homeが、アプリ検索や宣伝の仕組みや、マネタイズの方法を導入すると予測。今年中に、マネタイズに成功するヒットアプリが幾つか登場し、来年はその数がさらに増えるだろう、としている。

といってもこれは一部欧米地域での話。気になるのは、日本国内の動向だ。

Amazonからの正式発表はまだないが、Amazonが動き出したという情報が僕のところに次々と寄せられている。日本国内でAmazon Echoの年内発売は、ほぼ間違いないだろう。

一方でLINEは、AIプラットフォームのClovaを搭載したスマートスピーカー「WAVE」を発売する計画を発表している。

Amazon vs LINEの真っ向勝負。勝利の女神はどちらに微笑むのだろうか。

VoiceLabsがAmazon EchoとGoogle Homeのユーザーに対してアンケート調査したところ、両方のデバイスを購入したいと答えた人は11%しかいなかったという。つまり今のところ、ほとんどのユーザーがボイス・ファースト・デバイスは、一家に一台で十分だと考えている。Amazon Echoを購入した人は、Google Homeを購入する気はなく、家の中の家電製品をすべてEcho対応デバイスにしようとする。Google Homeを購入した人は、Amazon Echoを購入せずに、すべての家電をGoogle Homeに準拠させようとする。そういう流れにあるように見える。

生き残れるのは1社のみ。やるか、やられるか。果たして、そういう戦いになるのだろうか。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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