コラム

親愛なるソマリアよ、国際援助はどう使われる?

2009年04月25日(土)03時03分

 昨日、ベルギーのブリュッセルで開かれたソマリア支援会議で、世界各国が今後1年間で総額2億1300万ドルの支援を行うことが約束された。だが詳しい内容は見えてこない。実際、詳細など全く決まっていないのだ。

 今回の支援は、ソマリア国内の治安能力を向上させ、窮地に立つアフリカ連合ソマリア平和維持部隊(AMISOM)を現在の4300人から8000人に増強するために使われることになっている。しかしその先行きには以下の通り、疑問が尽きない。

1. 実際に拠出される支援額は一体どれだけになるのか? 

 こうした会議で約束される支援金は大抵、その額通りには拠出されない。そもそも2億1300万ドルは大局的に見ればわずかな額だ。イラク戦争では06年当時、これと同じぐらいの戦費がたった一日で飛んでいったものだ。

2. 支援金を手にするのは誰なのか? 

 どうやら支援金は、シェイク・シャリフ・アハメド大統領の暫定政府を経由して配分されるらしい。この1月に発足したばかりの政権がどう支援金を使うのか、使途をきちんと監視するのは容易ではないだろう。

3. 支援金はソマリアの治安能力の強化に当てられるというが、果たしてこの国に治安部隊など存在すると言えるのだろうか?

 エチオピア軍が昨年、治安部隊の訓練を実施したが、給料を支払わなかったため、彼らの多くが職務を放棄した。まだ残っている隊員はどれぐらいいるだろうか。彼らにとっては治安部隊より武装勢力に加わるほうが実入りがいいのではないか。

4. AMISOMを倍増するのはいいが、補充人員はどこで見つけるのか?

 死の危険を伴うソマリアへの派兵は、アフリカのどの国も嫌がっている。

5. 最後に、支援国は海賊以外のソマリアの問題に果たして関心があるのだろうか?

 今回、会議場の外での外交官たちの話題は、もっぱら海賊対策だった。こうなるとソマリアは支援金を海賊以外の問題で使うのは難しいだろう。例えば政府職員への給与のような、然るべき使われ方であったとしてもだ。

 もし世界が本気で海賊対策をしようというなら、こんな支援計画はばかげている。もちろん、私が何か見逃していれば別だが。

 親愛なるソマリアよ、どうか私に詳しく教えて欲しい。


──エリザベス・ディキンソン

Reprinted with permission from "FP Passport" http://blog.foreignpolicy.com, 24/04/2009. © 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P横ばい、インフレ指標や企業決算

ワールド

米、ガザ「大量虐殺」と見なさず ラファ侵攻は誤り=

ワールド

トルコ・ギリシャ首脳が会談、ハマス巡る見解は不一致

ワールド

ロシア軍、北東部ハリコフで地上攻勢強化 戦線拡大
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子高齢化、死ぬまで働く中国農村の高齢者たち

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 6

    自宅のリフォーム中、床下でショッキングな発見をし…

  • 7

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 8

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 9

    あの伝説も、その語源も...事実疑わしき知識を得意げ…

  • 10

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story