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アングル:迷走する英離脱、首相代替案巡り議会で何が起きるか

2019年01月24日(木)08時01分

[ロンドン 22日 ロイター] - メイ英首相は欧州連合(EU)離脱に対する英国議会の承認手続きが進まない事態の打開に向け、アイルランド国境の厳しい管理を阻止するための計画について、EUからさらなる譲歩を引き出すことを提案している。

29日には議会がメイ首相の代替案を、他の議員が提出した修正案とともに審議・採決する見通し。議員からは、3月29日の離脱期限延長だけでなく、一連の手続きを進める権限を政府から議会に移譲することなどを求めるいくつかの修正案も出された。

議会が主導権を握れば、ブレグジット(英のEU離脱)の阻止ないし先送り、または再交渉を望む勢力にとっては、法的な実行手段を確保できる。

今後の流れは次のようになる。

●21─29日:議員が修正案提出

議員はメイ首相の離脱案の修正に関する提案を始めている。29日に下院議長が採決にかける修正案を選ぶことになる。

これまでに出された修正案は以下の通り。

<修正案A>

野党・労働党のコービン党首が提出。合意なきブレグジットを防ぐための選択肢を議会が検討するよう要求している。具体的には恒久的にEUの関税同盟にとどまることや、国民投票の再実施など。与党・保守党の親EU派が不支持を表明している以上、可決の公算は乏しい。

<修正案B>

一部の労働党議員グループが提出。政府がEUに対して離脱期限の延長要請を行った上で、250人の国民代表で構成する審議会を設置し、次の方策を検討して10週間以内に議会に提言することを促している。

<修正案C>

下院のブレグジット特別委員会のベン委員長(労働党)が提出。政府が(1)メイ首相の離脱案の是非を再度採決する(2)3月29日に合意なき離脱に踏み切る(3)政府にメイ首相の離脱案の再交渉を求める(4)国民投票を再び実施する──という選択肢を示し、それぞれについて議会に採決してもらうようにするべきだとしている。

<修正案D>

労働党と保守党、親EUの自由民主党の議員が提出。政府に離脱期限延長要請を行うよう求めている。

<修正案E>

労働党のクーパー議員が提出し、複数の保守党議員が支持しているので、可決の可能性がある。従来のルールを覆し、本来は政府に優先処理権限があるブレグジット問題を議会の管轄にするという内容。

メイ内閣が2月26日までに議会で離脱案の承認を得られない場合、議会にはEUに離脱延長を要請するかどうかを決める権限が与えられる。延長期間は年末までの9カ月に設定している。

<修正案F>

保守党のグリーブ議員が提出し、複数の政党の議員が支持しているため、やはり可決されてもおかしくない。

修正案Eと同様にブレグジット処理に関する政府優先ルールを覆す形で、2月と3月のどこかの週で1日ずつ、議会がブレグジット問題で独自の議論を提案できる機会を設ける。

●29日:首相代替案と議員の各修正案を審議・採決

議会はメイ首相の代替案と議員の各修正案を審議・採決する。この段階で修正版離脱案として承認するかどうかの採決は求められない。

議会ルール変更が可決されれば、法律になる可能性がある事項は政府が管理するという英議会で長年維持されてきた原則が崩されることになる。

議員からの各修正案の採決状況は、今後過半数の賛成を得られるような道があるかを知る手掛かりになるはずだ。

何らかの修正案が可決された場合、メイ首相は再びEUと協議して離脱案の変更を求める可能性がある。それがどのような形になっても、最終的に議会が承認しなければならない。

ロイター
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