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アングル:ジョンソン氏が「英国のトランプ」になる理由

2019年07月23日(火)17時22分

[20日 ロイター] - 英国次期首相に最も近い人物とされる、ボリス・ジョンソン前外相。一見、トランプ米大統領に容姿が似ていると感じる人も少なくないだろう。

だが似ているのはその髪の色だけではないと、ロイターのガイ・ファウルコンブリッジ英国支局長は指摘する。

「ジョンソン氏はトランプ氏のような髪だけでなく、有権者を魅了したり、あるいはその不満をたきつける能力も似ている」とファウルコンブリッジ支局長。「またジョンソン氏は他の政治家なら避けがちな、賛否の分かれる論争にもあえて首を突っ込む。さらに、トップの座を維持するために必要な狡猾さや抜け目のなさもトランプ氏に似ている。」

ジョンソン氏が首相の座を狙っていることは、何年も前から周知の事実だった。同氏が2016年、欧州連合(EU)離脱派の姿勢を鮮明にしたのは、それが理由だとみられている。同氏は当初、EU残留派だとみられていた。

「ジョンソン氏もトランプ氏も反体制派を標榜しているが、実際はそれぞれの国で支配者層の中枢にいた人物だ。ただ2人とも、自分を庶民の代表と見せることが上手い。歯に衣着せぬ物言いで、時には議論を引き起こしながらも、世論を味方につける」とファウルコンブリッジ支局長は指摘する。

両氏とも、他の人なら政治生命を閉ざされかねないスキャンダルにも不死身だ。トランプ氏は今週、民主党の非白人女性議員4人に対し「国に帰ってはどうか」などと発言し、再び人種差別との非難を浴びた。

一方、ジョンソン氏が書いた新聞のコラムは悪評が高い。イスラム教徒の女性がかぶるベールを、銀行強盗のマスクに例えたこともあった。またアフリカ人を「スイカみたいな笑顔」と評したり、黒人の子供たちを見下したような言い方をしたこともあった。

だがいつも気が合うというわけでもないようだ。トランプ氏がイスラム教徒の米入国を禁止しようとしたとき、ロンドン市長だったジョンソン氏は「正気の沙汰ではない」と批判した。

「ニューヨークで生まれたジョンソン氏は、幼少期をベルギーで過ごすなど、国際色豊かな経歴の持ち主で、移民政策ではリベラル寄りだ。だが政治的目的を果たすためなら、移民を標的にすることも辞さない」とファウルコンブリッジ支局長は話す。

ジョンソン氏は今月、トランプ氏を批判する内容の公電が漏えいした事件で、ダロック前駐米大使をかばわなかったことから、トランプ氏の言いなりと揶揄された。ダロック氏は責任を取って辞任した。

ジョンソン氏は、何があっても期限内に英国をEUから離脱させると表明。そのためジョンソン氏とトランプ氏の関係に注目が集まりそうだ。

ファウルコンブリッジ支局長は「英国がEUを離脱し、ジョンソン氏は米国との関係強化を迫られることになるだろう」と予想する。「英国がEUと対等に渡り歩くためには、米国の後ろ盾が欠かせないからだ。したがってジョンソン氏は、トランプ氏と非常に親密な関係にならざる得ないだろう。」

ロイター
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