コラム

ランサムウェア犯罪の現状とは──在宅勤務が加速させ、中学生から外国政府ハッカーまで広がる

2020年11月27日(金)01時59分

外国政府と関係のあるランサムウェア犯罪グループ

ランサムウェア犯罪グループの中には外国政府の関与が疑われているものもある。たとえばWastedLockerというランサムウェアを使うEvil Corpはロシア政府との関与が指摘されている(wired、2019年12月5日)。

他にも各国政府の関与の可能性が考えられるが、こうしたグループの関係は非常にわかりにくい。たとえばランサムウェアのひとつであるClopを使うロシアのTA505(別称:Hive0065)は2014年から金目当ての犯行を繰り返しているグループで、ランサムウェアに限らずさまざまな方法で犯行を繰り返している(MITRE、2020年6月23日)。

このグループは、他のグループと混同されることが多い。少々入り組んだ話になって恐縮だが、TA505はAnunakグループ(別称:FIN7、Carbanak)と連携しており、AnunakグループはEvil Corpというグループとも連携している。そのため、これらのグループはいっしょくたに扱われることも多い。たとえばマイクロソフトは2020年1月30日に「Dudear (aka TA505/SectorJ04/Evil Corp)」とツイートしている。

実際は2017年以降これらのグループが共同で活動しているのは発見されていない(nccgroup、2020年6月23日)。

恐れるべきは組織内の信用の崩壊

RaaSによるランサムウェア攻撃者の裾野の拡大、在宅勤務の増加による攻撃容易なターゲットの増加、海外政府関与のグループによるランサムウェアの利用の3つによって、今後さらにランサムウェアの脅威は高まる。特に注意が必要なのは、内部犯罪の増加の可能性だ。攻撃者を特定することが難しいので、統計数値として現れにくいことも気になる。

内部犯行の増加は組織内の信用関係を破壊しかねない。内部の人間を疑い始めると切りがないうえ、組織構成員の相互不信を生み、監視強化がさらに広がる土壌を作る。

プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ウクライナ侵攻と情報戦』(扶桑社新書)など著作多数。X(旧ツイッター)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トルコ・ギリシャ首脳が会談、ハマス巡る見解は不一致

ワールド

ロシア軍、北東部ハリコフで地上攻勢強化 戦線拡大

ビジネス

中国、大きく反発も 米が計画の関税措置に=イエレン

ビジネス

UBS、クレディS買収後の技術統合に遅延あればリス
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子高齢化、死ぬまで働く中国農村の高齢者たち

  • 4

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 5

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 6

    自宅のリフォーム中、床下でショッキングな発見をし…

  • 7

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 8

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 9

    あの伝説も、その語源も...事実疑わしき知識を得意げ…

  • 10

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story