コラム

イナゴの大群、新たに大発生の予兆。国連「資金がない。駆除できなくなる」とSOS

2021年01月27日(水)19時47分

ある世代から次の世代には、イナゴの数は3カ月で20倍、半年で400倍になる。孤立したイナゴは無害だが、一旦群集行動を起こすと行動を変えてしまう。

(なぜ、孤立から群集行動を起こすようになるのか。最新研究の「集合フェロモン」と、遺伝子操作問題についてはこちらをクリック

その後、大群はイラン、パキスタン、インドに広がり、同時にアラビア半島の他の地域や東アフリカにも広がっていった。

最初の2018年の時点で、専門家は既に、将来のイナゴの大発生を警告していた。

この時点で予防ができればよかった。しかし、実際に大被害が起こらないと、資金が集まらないのだ。

最初に幼虫が増え始めて、まだ地面にいるうちに予防措置をしていれば、殺虫剤の散布も小規模で済む。人が背負って散布したり、全地形対応車で散布したりできるのだ。

殺虫剤の使用も少なくて済み、人や作物、環境に与える影響も限定的で済む。それに、お金もより少なくて済む。

今、飛行機での散布が必要な事態になると、大変なコストがかかる。2003年から2005年の危機では、4億ドル(約408億円)以上の資金が必要だった。

西アフリカが協力して対策が進んできているのに比べて、東アフリカは、内戦中や、政情不安定な国が多いのも、対策が遅れる要因の一つだ。

今回は2019年後半に、最初に爆発的に増えた砂漠イナゴの巨大群は、幅60キロにも及ぶものもあった。

「ここ数十年では見られなかったことだ」、「ただでさえ多くの人々が飢えに苦しんでいる地域なのに、さらに食糧を脅かしている」と、国連食農機関のドミニク・バージョン緊急事態・回復担当ディレクターは言う。

ケニア・マルサビットの様子。大群の飛行を前に、鳥も人間も逃げ出している。今年1月18日アップのビデオ(1分51秒)


ケニア、再度の危機と落胆

昨年、ケニアでは一時は収まった時期があった。

しかし現在、まだ成虫になっていない群れが、北から到着し続けている。

群れは、1週間前には4つの郡、週初めには7つの郡、そして週末には11の郡で確認された。いくつかの群れでは、成熟し始めている。そうすれば繁殖が始まってしまう。

ロイター通信の報道によると、農民や村人は、せっかく育てた作物や牧草地が、イナゴの大群によって荒らされ、食い尽くされる大惨事となるのを毎年目の当たりにして、たいへん落胆しているという。

ケニアのマルサビットに拠点を置くカトリック救援事業会(Catholic Relief Services)の上級プロジェクト責任者、イリアス・イマン・アブドゥルカディール氏はロイターに語った。

プロフィール

今井佐緒里

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出合い、EUが変えゆく世界、平等と自由。社会・文化・国際関係等を中心に執筆。ソルボンヌ大学(Paris 3)大学院国際関係・ヨーロッパ研究学院修士号取得。日本EU学会、日仏政治学会会員。編著に「ニッポンの評判 世界17カ国最新レポート」(新潮社)、欧州の章編著に「世界が感嘆する日本人~海外メディアが報じた大震災後のニッポン」「世界で広がる脱原発」(宝島社)、連載「マリアンヌ時評」(フランス・ニュースダイジェスト)等。フランス政府組織で通訳。早稲田大学哲学科卒。出版社の編集者出身。 仏英語翻訳。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story