コラム

アストラゼネカ製コロナワクチン、欧州15カ国以上で使用を一時中止。火付け役はEUというより北欧の国々

2021年03月17日(水)10時35分

12日(金)、世界保健機関(WHO)はこのワクチンを「使用しない理由はない」と断言した。

EU機関が再検討を決定

欧州医薬品庁(EMA)は、「英国での約500万回の予防接種の中で観察されたアナフィラキシーの可能性がある41件の報告」のうち、少なくともいくつかについては「おそらく」因果関係があるとしている。

その中では、重度のアレルギーがワクチンの副作用の可能性のリストに追加されるべきだが、ワクチンはまだ安全であると主張していた。

しかし上記の事態を受けて、欧州医薬品庁(EMA)は、3月15日(月)のプレスリリースで、同社製のワクチンと、接種した人に血栓が現れることとの関連性の可能性に関する調査の結論を出すため、18日(木)に臨時会議を開催することを発表した。

WHOのほうは、各国にワクチンの使用継続を呼びかけつつ、16日(火)に専門家グループを招集する予定である。

なぜ北欧の国々がリードしたのか

今回の一時中止の動きは、デンマーク、ノルウェー、アイスランドと、欧州の北の国々から始まっている(このうちデンマークだけがEU加盟国)。

なぜ北欧の国々がリードしたのかという質問に、アンヌ・セヌキエ医師(IRIS / Institute for International and Strategic Relations のGlobal Health Observatoryの共同ディレクター)が答えている。

「北欧諸国の当局は、普通ではないことに注意を払い、我々よりも包括的なのです。健康への注目度はグローバルであり、特に『健康と安心(well-being)』の分野ではそうなのです。

自然の代替医療は、欧州の南の国よりも北の国で多く行われています。実際、彼らは住民と医療機関の間の信頼関係を維持し、公共の場で疑問を投げかけることができる能力をもっています。

フランスでは、疫病への対応が政治化しており、マスクやワクチンなどの失敗を指摘して、責め合うことに時間を費やしています」

これからEUはどう対応するのか

一方、EUの行政機関である欧州委員会は、EU加盟国の平等を基礎に、EU単位でワクチンの調達をはかっているが、なかなか上手くいっていないのが現状だ。

プロフィール

今井佐緒里

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出合い、EUが変えゆく世界、平等と自由。社会・文化・国際関係等を中心に執筆。ソルボンヌ大学(Paris 3)大学院国際関係・ヨーロッパ研究学院修士号取得。日本EU学会、日仏政治学会会員。編著に「ニッポンの評判 世界17カ国最新レポート」(新潮社)、欧州の章編著に「世界が感嘆する日本人~海外メディアが報じた大震災後のニッポン」「世界で広がる脱原発」(宝島社)、連載「マリアンヌ時評」(フランス・ニュースダイジェスト)等。フランス政府組織で通訳。早稲田大学哲学科卒。出版社の編集者出身。 仏英語翻訳。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EXCLUSIVE-トルコ、予算削減額は予想上回る

ビジネス

米金利維持が物価目標達成につながる=クリーブランド

ビジネス

米4月輸入物価、前月比0.9%上昇 約2年ぶり大幅

ビジネス

米鉱工業生産、4月製造業は0.3%低下 市場予想下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 3

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃のイスラエル」は止まらない

  • 4

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 5

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 6

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 7

    2023年の北半球、過去2000年で最も暑い夏──温暖化が…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    仰向けで微動だにせず...食事にありつきたい「演技派…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story