コラム

オリバー・ストーンの甘すぎるプーチンインタビューと、その重すぎる代償

2022年05月23日(月)06時30分

「あきれるほど寛容」という米メディアの酷評

興味深いのは訳者が記しているように、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポスト、CNNといったメディアからは「あきれるほど寛容」、「ストーンは甘い球を投げつづけ、プーチンがそれを粛々と打ち返すだけ」という厳しい批判が出ていることだ。多くのジャーナリストは同じような感想を抱くだろう。オリバー・ストーンの対象に寄り添う危うさはそれほど明白なのだ。

言葉を引き出すため、インタビューである程度の同調はあってもいい。だが、本や作品に落とし込む時点では、距離を取る必要があった。特に強大な権力者を相手にするときは。本書の失敗から得られる教訓は、あまりにも凡庸なものしかない。

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プロフィール

石戸 諭

(いしど・さとる)
記者/ノンフィクションライター。1984年生まれ、東京都出身。立命館大学卒業後、毎日新聞などを経て2018 年に独立。本誌の特集「百田尚樹現象」で2020年の「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞作品賞」を、月刊文藝春秋掲載の「『自粛警察』の正体──小市民が弾圧者に変わるとき」で2021年のPEPジャーナリズム大賞受賞。著書に『リスクと生きる、死者と生きる』(亜紀書房)、『ルポ 百田尚樹現象――愛国ポピュリズムの現在地』(小学館)、『ニュースの未来』 (光文社新書)など

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