コラム

障がいがある子の新米お母さんたちへ、今伝えたいこと(前編)

2016年08月01日(月)16時50分

splendens-iStock.

<相模原市の福祉施設で起きた殺傷事件について、福祉現場の問題点と関連付ける意見があることに驚かされる。人間の尊厳と福祉の労働環境の改善は、本来別次元の問題だ>

 日銀の金融政策について。このコラムをお引き受けした1年以上前から金融政策でできることには限界があると申し上げている通りで、その見解に変更なし。本当に日本全体の実体経済の増強をはかるなら、その1つとして行うべきは日本の企業数で言えば99.7%を占める中小零細企業(多くが地方経済とその雇用を支える中堅以下の地場産業)が本来持つ能力をいかんなく発揮し活動できる、税制も含めた制度そのものの徹底的な見直しやきめ細やかな政策の実施となりますが、その中小企業の代表である日商会頭ですら個人消費や設備投資への効果が限定的であるため追加緩和の必要なしと釘を刺しています。それにも関わらず、追加緩和として株を購入するとは。一体誰のための、何のための金融緩和なのか。もはや何も余計なことをしないのが実体経済には最良の一言に尽きます。

 大体、2%の物価安定目標など消費税増税を3%すれば(①消費税増税はモノの値段をあげるコストプッシュ要因です。それにより、②消費が減退・内需が疲弊して縮小するためデフレ化するという順番で国内経済に影響)、3%>2%で楽々カバーできるだろうと(①だけを勘案して②の甚大な影響を鑑みない)短絡的かつ表層的な皮算用をした結果なのではないでしょうか、自身の掲げた目標も達成もできないまま。実体経済を一切無視した政策で効果を期待する方がおかしな話で、経済はそんなに単純ではないということを早々に認めて方向転換しない限り、問題は先送りされ、その間山積されるだけ。今回の緩和で恩恵?に預かるであろうはずの日経平均株価は、追加緩和発表当日の終値で前日比たったの+0.56%の16,569.27円。もはや手詰まりと見透かしたのはむしろ、一時101円台(前日比で約3円円高)となった為替市場の方でしたね。

【参考記事】英メディアを離脱支持に回らせた「既得権益」

*****


 と、金融政策についてはこれくらいに。経済メインの当コラムの主旨をいささか外れることをご容赦いただいて、今回はイレギュラーではありますが、7年前の私のような立場にある新米お母さんたちへ少しお話をさせて下さい。

 私の長女は7年前の初夏、障がいを持って生まれてきました。3歳を過ぎるまで一人で歩けませんでしたし、今でも発話はできません。娘に障がいがあることは、生まれた直後からわかり、とても混乱しました。40歳過ぎての高齢出産のため様々なリスクを勘案した上で出産に臨んだつもりだったのですが、突き付けられた現実は余りに大きく、同じような経験をされたお母さん方同様、それをすぐには受け入れられませんでした。

 今回、絶対あってはならない、とても凄惨な事件が神奈川県の福祉施設で起きました。亡くなった方々のお気持ちを考えると本当にいたたまれません。ご冥福を深くお祈りするとともに、ご家族の皆さまに心からお悔やみを申し上げます。怪我を負った方々が一日も早く回復されますように、被害にあった施設で生活する皆さん、職員、それを見守る家族、近隣住民の皆さんがなるべく早く日常生活を取り戻すことができますように願っています。

プロフィール

岩本沙弓

経済評論家。大阪経済大学経営学部客員教授。 為替・国際金融関連の執筆・講演活動の他、国内外の金融機関勤務の経験を生かし、参議院、学術講演会、政党関連の勉強会、新聞社主催の講演会等にて、国際金融市場における日本の立場を中心に解説。 主な著作に『新・マネー敗戦』(文春新書)他。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

官僚時代は「米と対立ばかり」、訪米は隔世の感=斎藤

ビジネス

全国コアCPI、3月は+2.6% 年度内の2%割れ

ワールド

ロシアが政府職員の出国制限強化、機密漏洩を警戒=関

ビジネス

G20、米利下げ観測後退で債務巡る議論に緊急性=ブ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story