コラム

「桜を見る会」よりもポスト安倍の世界に目を向けよ

2019年11月19日(火)18時10分

次に、政治家と官僚の質の劣化を食い止める必要がある。導入から25年がたつ小選挙区制は、今や全投票の48%が「死票」という非民主的な結果を招いたばかりか、次の選挙のことしか考えない小粒の政治家を生むなど、欠陥をあらわにしている。官僚はと言えば、首相官邸を向いて忖度に励み、作家・城山三郎が『官僚たちの夏』で描いた、社会に根を下ろす気概を失っている。「日本は課題先進国」だと胸を張るなら、選挙・政党・官僚制といった近代欧米国家の仕組みを、日本が先立って改革するガッツを見せてもいいではないか。

いま問題になっている「桜を見る会」の件が、うやむやのまま収まるか、総選挙にまで発展するのか分からないが、総理大臣1人をすげ替えることで日本政治が根本的に良くなるとは思わない。政権交代と同時に政治制度の大掃除をしておくべきだ。インダストリー4・0などと言われるように、「近代」の次の時代が訪れようとしている。政治制度も近代民主主義4・0版を考えていかねばなるまい。

<本誌2019年11月26日号掲載>

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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