コラム

プーチン政権のアキレス腱は反体制派ではない

2021年07月07日(水)11時30分

石油や穀物生産のほうが利益率が高いので投資はそちらに集中する。民需製品生産用の技術やノウハウ、企業の経営要員は、ソ連時代の民需軽視がたたって欠如そのもの。もの作りはこれからも駄目だろう。加えて、ウクライナ問題を受けた西側諸国の制裁で、半導体を筆頭に先端技術を入手できなくなったことは、今後の軍備にも響く。既にロシア版GPSのGLONASSは、「賞味期限」を迎えた衛星を更新できなくなっている。

9月に連邦下院の総選挙、2024年に大統領選挙を控えているため、政府はインフラ建設に大盤振る舞いして経済を盛り上げ、国民の支持を得ようとしている。しかしインフレが進んでいるため、大盤振る舞いはもうできない。

ならばということか、治安当局は首脳陣の汚職を批判するアレクセイ・ナワリヌイばかりか、「ユーチューバーでもブロガーでも反対する者は全部投獄」の意気込みだ。

だが、そうやって化石化する体制や経済に君臨するプーチンもそろそろ69 歳でロシア人男性の平均寿命を超えた。極東でのロシアは欧州におけるほど存在感がないが、よそ事ながら心配になる。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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