コラム

台湾情勢は中国もアメリカも台湾与野党も手詰まり 最も現実的な解決策は......

2022年09月03日(土)17時29分

アメリカの役割は、「中国は台湾に武力行動を起こせない」という状況を維持(つまり中国軍を抑止)することだろう。

これを超えてネオコン的連中が考えているだろう、「中国を挑発して戦争に引きずり込む」やり方は、台湾自身が嫌がるだろう。それは「自由と民主主義の擁護」と言いながら、その実、アメリカの利権(西太平洋における米軍展開の自由など)を台湾の人間の血で贖あがなおうとする企てに見えるからだ。

手詰まりのなか、現状を法的に固定して協力・交流の拡大を進めた例がある。

米ソ冷戦たけなわの1975年、「緊張緩和」を旗印に、米欧・ソ連が設置で合意した欧州安全保障協力会議(CSCE)とヘルシンキ宣言の発表だ。これは当時の国境を固定し、その上で東西両陣営の信頼醸成や交流と協力の強化を定めたものだった。

台湾は独立国家ではないのでアジア版CSCEは時期尚早だが、公海の安全や航行の自由などの原則で合意することはできるだろう。

これはまた、穏健路線の岸田政権が音頭を取るのに向いた路線ではあるまいか。

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プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』(草思社)など。最新刊は『日本がウクライナになる日』(CCCメディアハウス)  <筆者の過去記事一覧はこちら

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