コラム

管理職が多すぎる! 変わる日本企業の人事制度が意味するもの

2020年03月26日(木)16時59分

年齢とともにほとんどの社員が昇進していく時代はもう終わり TRILOKS/ISTOCKPHOTO

<不況時にも一貫して管理職を増やし続けてきた日本企業が、ついに方針転換。会社が変化する今、サラリーマンたちが考えるべきこととは>

日本の企業組織が逆回転を始めつつある。日本企業は1970年代以降、ほぼ一貫して組織を肥大化させてきたが、それも限界に達しつつある。今後は日本の会社から急速に管理職が減っていくだろう。

日本の大企業は過去40年間、一貫して組織内における管理職の比率を増やしてきた。1980年代における管理職の比率は全体の21%程度だったが、2010年代には26%まで上昇している。

本来、管理職の比率は一定範囲内にとどめておくのが望ましいが、日本の場合、年功序列の処遇が原則なので、在職期間が長い社員は基本的に管理職に昇進し、それに合わせて賃金も上昇していく。このため、年々管理職の比率が上昇し、賃金総額も増える傾向にあった。

こうした人事戦略は一般論として持続不可能だが、唯一の例外がある。経済が半永久的に右肩上がりで成長すれば、企業の売上高と利益は増加していくので、人件費増大分をカバーできる。

だが90年代以降、日本経済は成長鈍化が顕著となり、GDPは横ばいに近い状況が続いてきた。本来であれば、管理職への登用は抑制されるべきだったが、2010年代に入っても日本企業は管理職を増やし続けてきた。

近年では、実質的には部下のいない部長や、スタッフ部門に課長や部長を新設する形で、ラインには属していない管理職を量産しているが、17年頃からその傾向に変化が見られるようになってきた。これまで増加一辺倒だった管理職比率が低下したのである。

まだ明確なトレンドになっているわけではないが、この動きがもし本物であれば、極めて大きな変化といってよい。つまり従来の日本型雇用システムが、逆回転を始めたことを意味しているからだ。

今後はキャリアの再考も必要になる

管理職比率が低下した理由として考えられるのは、早期退職プログラムの実施と役職定年である。早期退職プログラムは賃金が高い中高年をターゲットにしたものがほとんどであり、対象者の多くが管理職と考えられる。応じる人が増えるほど、企業内における管理職比率は低下する。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=ほぼ横ばい、経済指標や企業決算見極め

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米指標やFRB高官発言受け

ビジネス

ネットフリックス、第1四半期加入者が大幅増 売上高

ビジネス

USスチール買収計画の審査、通常通り実施へ=米NE
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 9

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story