コラム

なぜ文政権の支持率は低下し続けるのか?

2021年04月26日(月)11時47分

さらに、ソウル大学が今年の4月21日に発表した「2021年韓国社会の鬱憤調査」では、回答者の58.2%が慢性的な鬱憤を感じていると答えた。2019年調査の43.5%と2020年調査の47.3%を大きく上回る数値である。

2019年の曺国氏のスキャンダル、2020年の朴元淳(パク・ウォンジュン)ソウル前市長と呉巨敦(オ・ゴドン)前釜山市長のセクハラスキャンダル等文政権で相次ぐ不祥事は国民の政権離れを加速化させた。

最近の支持率低下の最も大きな要因としては「不動産政策の失敗」が挙げられる。文政権は就任した 2017 年の 5 月から今年の 2 月まで不動産価格の安定を目指し、6.17 不動産対策、7.10 不動産対策、8.2 不動産対策等 25 回にわたる不動産対策を実施した。しかしながら、ソウルを中心とした不動産価格、 特にマンション価格は下がるところか、高騰を続けている。

特に、2020年7月末に「契約更新請求権」と「伝貰・月貰上限制」が施行されてから、伝貰物件の供給が急激に減り、伝貰価格が跳ね上がった。その結果、新婚夫婦を中心とした若い世帯の住まい探しが難しくなり、政府の不動産政策に対する不満の声が高まった。さらに、最近は宅地開発などを手がける公共機関である韓国土地住宅公社(LH)の職員による不正不動産投機疑惑まで発生し、文政権の不動産政策に対する不信感が強まった。

若者の支持率低下には「雇用関連政策の失敗による就業難」が大きな影響を与えた。文政権は、最低賃金の引き上げ、週52時間勤務制、公共部門の雇用拡大等を実施することにより、雇用創出を計画したものの、関連政策が失敗したことと共に、米中貿易摩擦の長期化、日本政府の輸出規制の強化、新型コロナウイルの発生等の外部要因も加わり、雇用状況は改善の気配を見せていない。2017年5月に100.3万人であった失業者数は2021年3月には121.万人まで増加し、同期間における失業率は3.6%から4.3%に上昇した。

特に、若者の雇用状況は改善されず、2021年3月時点の15~29歳の若者の失業率は10.0%で全体失業率4.3%を2倍以上も上回っている。さらに、潜在的な失業者や不完全就業者(週18時間未満働いている者)を加えた2021年3月時点の「拡張失業率」は、全体で14.3%、15~29歳で25.4%と高い水準が続いている。

そして、新型コロナウイルスの長期化も文政権の支持率にマイナスの影響を与えている。2020年には、徹底的な検査、隔離、情報提供等に代表される「K防疫」がある程度成果を挙げ、文政権に対する国民の評価も高かったものの、最近はワクチン確保の遅れで世論の逆風を受けており、支持率低下につながっている。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員、亜細亜大学特任准教授を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア製造業PMI、4月は54.3 3カ月ぶり低水

ビジネス

午後3時のドルは155円半ば、早朝急落後も介入警戒

ビジネス

日経平均は小幅続落、連休前でポジション調整 底堅さ

ビジネス

丸紅、発行済み株式の2.3%・500億円上限に自社
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story