コラム

韓国大統領選、尹錫悦候補の支持率はなぜ再上昇できたのか

2022年01月27日(木)20時10分

李代表は尹候補が自分を認めてくれることをずっと待っていたのかも知れない。李代表としては、党代表である自分を認めて、任せてくれれば何でもできるのに、認めてくれなかったのが不満であったようだ。支持率の低下により、尹候補は改めて「このままでは選挙で勝つことはできない。李代表の力が必要だ」と判断したのだろう。

李代表が合流してから尹候補は積極的に動き始めた。特に20代と30代向けの対策に力を入れた。その代表的な戦略が「shorts尹錫悦59秒公約」である。これは尹候補本人と李代表、そして元喜龍(ウォン・ヒリョン)中央選挙対策委員会政策総括本部長が直接国民の生活と関連する公約を映像として作り、YouTubeにアップする、いわゆる「生活密着型公約」である。李代表のアイデアである。

「shorts尹錫悦59秒公約」動画の例

室内体育施設の利用料に所得控除を適用します


猫の登録を義務化します。医療保険も適用対象にします。

短い時間内で候補者自らが出演し、生活周辺の社会問題に対する解決策を公約として出してきていることはある程度評価できる。今まで動画にアップした公約としては、公職にある者の財産を公開しデータベース化、地下鉄とバスの定期券を連携、年齢の数え方を国際基準に統一、産後うつ病の治療に対する支援拡大、室内体育施設利用料の所得控除適用等がある。

現在のところ、李代表との和解は尹候補にプラス要因となり、支持率上昇に繋がっている
。しかし、今後の動向は誰も予測できない。尹候補としては夫人の金建希氏の経歴詐称問題で今まで築いてきた「公正」のイメージが一気に崩れてしまった。金氏は経歴詐称問題の他にも、知人の経営者による株価操作に関与した疑惑がある。今後、このような疑惑を晴らし、「公正」のイメージを回復することが尹候補の大きな課題であるだろう。

プロフィール

金 明中

1970年韓国仁川生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科前期・後期博士課程修了(博士、商学)。独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年からニッセイ基礎研究所。日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員、亜細亜大学特任准教授を兼任。専門分野は労働経済学、社会保障論、日・韓社会政策比較分析。近著に『韓国における社会政策のあり方』(旬報社)がある

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀が金利据え置き、総裁「状況は正しい方向」 利

ビジネス

FRB「市場との対話」、専門家は高評価 国民の信頼

ワールド

ロシア戦術核兵器の演習計画、プーチン氏「異例ではな

ワールド

英世論調査、労働党リード拡大 地方選惨敗の与党に3
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 3

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 4

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 5

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 6

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 7

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 10

    上半身裸の女性バックダンサーと「がっつりキス」...…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story