コラム

ジェンダー平等という黒船に気付かず日本政治は「ムラ」に閉じこもる

2021年04月06日(火)19時35分

その中には、前回の舌禍への反省がないことや変わらぬ女性への偏見を批判する声もあれば、あるいはパーティーという場での発言をメディアが切り取って報道すること自体を批判する声もある。それぞれ一理あろうが、もっとも重要なことは、ジェンダーを巡って、日本政治の抱える「ムラ」の論理と「社会」との間に横たわるギャップが改めて顕在化したという点だろう。

今回の発言は直接的には女性政治家を対象としたものではなく、女性秘書を揶揄したものであるが、事の本質は同じ。これを「他山の石」とするのであれば、日本政治が抱える「ムラ社会の論理」が直面している課題をジェンダー平等の観点から真剣に考える必要があるのではないだろうか。それは、女性議員と候補者の数をどう増やすかということに加えて、日本政治のトップに女性が就く現実的な可能性を考えることでもある。

俳優・吉沢亮氏が若き渋沢栄一を好演しているNHK大河ドラマ「青天を衝け」では、血洗島(現埼玉県深谷市)という小さな農村に生まれ育った渋沢栄一が「ペルリ来航」のインパクトを受けて、徐々に外界への関心を高めていく様子が丁寧に描かれている。「ムラの外」への想像力こそが、明治維新を支え、近代日本発展の原動力になったとも言える。

ジェンダーギャップのランキングが示した女性の政治参加147位という順位は、日本政治が抱える「ムラ社会の論理」を前にして、ジェンダー平等という課題がなかなか内在化しない現実を突きつけている。「ムラの外」への想像力を日本の政治がどう取り戻すかが問われている。

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プロフィール

北島 純

社会構想⼤学院⼤学教授
東京⼤学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、現在、経済社会システム総合研究所(IESS)客員研究主幹及び経営倫理実践研究センター(BERC)主任研究員を兼務。専門は政治過程論、コンプライアンス、情報戦略。最近の論考に「伝統文化の「盗用」と文化デューデリジェンス ―広告をはじめとする表現活動において「文化の盗用」非難が惹起される蓋然性を事前精査する基準定立の試み―」(社会構想研究第4巻1号、2022)等がある。
Twitter: @kitajimajun

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