コラム

同窓会で見つけた、精神が腐った人と若く活力に満ちた人の違い

2018年05月18日(金)17時30分

Studiophotosite-iStock.

<会社でたいした仕事はなく、定年しても、孫の世話か太極拳をするだけ。そんな生活では、保守的で怠惰で頑固な老人になるのも納得だ>

こんにちは、新宿案内人の李小牧です。

やや自慢話になってしまうが、お付き合いいただきたい。まもなく還暦を迎える私だが、今も若い頃とさほど変わらない体形をキープしている。「毎晩飲み歩いている李さんが、なぜいい体のままなの?」とよく羨ましがられるほどだ。

私自身にも理由は分からなかったのだが、今回アンチエイジングの秘密が見つかったので、それをお伝えしよう。

4月、故郷の湖南省長沙市に帰省した。目的は同窓会への出席だ。私は中学1年生のとき、長沙市中学生歌舞団というダンスサークルに所属していた。サークルと言っても趣味の類ではない。市内の中学校から選抜されたエリート学生ダンサーを集めた団体で、各種公式行事に呼び出されては踊りを披露するのが仕事である。いわばセミプロのようなものだ。

同窓会は楽しみであると同時に、憂鬱でもある。古い友人と出会えるのは本当に素晴らしいことだ。青春を共にした仲間たちは代えがたい、宝物のような存在なのだから。だが一方で、記憶の中で美しい存在だった友人たちが老いさらばえている姿を見るのが辛い。

もちろん人間、年を取れば姿が変わるのは当然のことだ。還暦を目の前にしても、昔と変わらぬダンサー体形を保っている私のような人間のほうが珍しいだろう。

だが、若い頃の鍛錬なのだろうか。今回の同窓会では体形をキープしている人が多かった。

参加者の1人に私の初恋の人がいた。彼女も私のことを好きだったようだが、当時の私はアプローチをかけられないで終わってしまう。歌舞伎町式恋愛にすっかり染まってしまった今の私からは想像もつかないだろうが、純真で奥手な時代もあったのだ。その彼女も年齢には見合わぬ美しい体を保持していた。

なるべく醜くならずに老いていきたいと願っているが、外見はある程度仕方がない部分もある。問題は精神だ。頭の回転が速く、野心に満ちあふれていたかつての友人たちが、保守的で怠惰で頑固な老人になっていると胸が痛む。

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長沙市中学生歌舞団の同窓生たち。後列右端が筆者(写真提供:筆者)

「転がる石には苔が生えぬ」

実はこれまでに2度、長沙市での同窓会に出席した。小学校と中学校の同窓会だが、かつての同級生たちの老いを見るのは辛かった。「李さんは若いね、はつらつとしている」とほめられたが、私に言わせれば彼らの精神が腐ってしまったのだ。

彼らだけの責任ではない。中国では、私の同世代の人間はほとんどが国有企業や政府機関で働いてきた。安定した仕事だが、刺激はなく、日々同じことの繰り返しだ。年を取ればたいした仕事もなく、出勤しては新聞を隅から隅まで読んで時間つぶしをするだけ。

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

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