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日本のプロレスが海外で人気爆発! 新日本プロレス・メイ社長に逆輸出の秘訣を聞いた

2018年12月17日(月)11時35分
井上 拓

――「プ女子」と呼ばれる女性や、子供連れのファミリーも見かけるようになりましたね。

私たちは、2つの大きな柱で支えられています。1つは、昔からのファンの方々。何十年もの間、良いときも悪いときもずっと応援してくれています。新日本プロレスに心理的な強いつながりを持ってくださり、もはや自分の生活の一部なんだとさえ言ってくれるような方たちです。

そしてもう1つは、新しいファンの方々です。プロレスをまったく知らなかったとか、もう何十年も見ていなかったけど、今プロレスってこんなになっているの? と観てくださるようになった方たち。

その新しいファンの方々というのは、もう男性の世界だけじゃないんです。新日本プロレスの観客の4割が成人女性。しかも20代~40代の女性が多いです。1割が子供、残り5割が成人男性。ですからプロレスは、女性も楽しめる、子供も楽しめるコンテンツに様変わりしているのです。

こうした新しいファンが来てくださる理由としては、昔よりも日本のプロレスが間口を広げていることも大きい。

新日本プロレスで言えば、G1(編集部注:ヘビー級選手によるリーグ戦)やタッグ(編集部注:1対1ではなく、2人がタッグを組んで行うタッグマッチ)のシリーズ戦をはじめ、いろいろな工夫をしてイベントの魅力度を高めたりしています。また「BULLET CLUB」とか「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」とか、個性豊かなユニットもたくさんある。

レスラーもいろいろなタイプがいますね。ウィル・オスプレイ選手みたいな空中殺法が得意な選手もいれば、石井智宏選手みたいなパワーファイターもいる。昔はプロレス全体を一言で言えば、単純明快なところがありました。レスラーのタイプもベビーフェイスあるいはヒール......。現在は、新しくプロレスを好きになっていただける要素がたくさんあるのです。

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©新日本プロレス

プロレスって、異空間ですよね。場所そのものが。試合もそうですし、観客としても普通やらないようなことをやる非日常空間。声援とか、キャーキャー言いたくても、ふだんは言えないですよね(笑)。

大好きな選手のTシャツを着てもいいし、コスプレやマスクだって着用してもいい。帰るときは、それらを脱いで普通の生活に戻る。プロレスに接する時間だけ、別世界になれるんですよ。これも新しいファンの方々に価値を再発見され、支持されている理由だと思います。

私はある意味、日本のカラオケ文化などが、それを補っていたのではと考えたりします。カラオケボックスに行けば、歌が上手くても下手でも関係ない。その空間を楽しむことがポイントなのであって、プロレスもその場を楽しむという意味では同じですよね。

――海外に比べて、日本ならではのプロレスの魅力とは何でしょうか。メイ社長はどんなところに感じますか。

日本の文化は、きめ細やかですよね。それは、愛情や情愛的な深さ。選手の衣装が1つ変わるだけで、なぜあの衣装にしたのかと、ファンの間で意見交換が始まります。例えば、あの選手は以前ハーフタイツだったのに、ロングスタイルになった。足が綺麗とか、セクシーとか、以前と比べてどうとか......。日本のファンの方々は、足や衣装の話だけで盛り上がれてしまう。

また、この選手が好きと、一度好きになってくれたら、どんどん好きになってくださる。ロイヤリティが高いのは、日本ならではプロレスファンの特徴だと感じます。

あとは、無理しなくていいファミリー感ですかね。仲間がすぐにできるというのは、大人になってからはなかなかない。プロレスには、往年のファンが新しいファンを温かく迎えてくれるところがある。

今日のレスラーのことをあまり知らないけど大丈夫かな? でも会場やSNSですぐに他のファンが教えてくれるんですよね、受け入れてくれるというか。あの選手は◯◯でとか、あの技は◯◯でとか。すぐにファミリーとして溶け込めるところは、私からすると日本的なコミュニティだと思います。

やはり体験価値なんですよ、非日常のファミリー感、そして深い愛情が持てる趣味。その1つがプロレスです。日本人がこれだけ長く生きる長寿社会になって、仕事だけじゃないよね、趣味でもいいし、仲間がいるの楽しいよねとみんな気づき始めた。日本でブームとして支持されている理由じゃないでしょうか。

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