コラム

GoToトラベル予算追加はあらゆる意味で間違っている

2020年10月16日(金)11時44分

一見成功しているようでも、実は自分の首を絞めていることに観光業界は気づかないのか(10月13日、東京・浅草) Issei Kato-REUTERS

<GoTo政策はそもそも需要の先食いで間違っているが、目先の観光業を救うためだとしても、予算を使い切ったところで政策目標は果たしたはずだ>

GoToトラベル予算追加はあらゆる意味で間違っている

最悪の上に最悪を重ねている。

そもそもGoTo政策は間違っている。

カネをばらまかないと旅行に行かないような人々は、補助金がなくなったら行かないわけだし、反動減もあるから(割引がなくなってから行くのは馬鹿馬鹿しい)、需要喚起ではなく、貧乏人の需要先食いに過ぎないから、中期的にも経済効果はマイナスの経済政策を税金を多額投入して行っているのだ。

さらに、予算追加、というのはあらゆる観点からあり得ない。

私が中期的に無駄だと言っても、いや目先が重要、観光業界を救う、という政策であれば、もともとの予算がなくなった、ということは、政策の目的である需要は十分に回復した、ということであるから、追加することはおかしい。もう役目は終わったはずだ。

豊かな高齢者層を怖がらせるだけ

本当に必要な政策は、お金はあって、補助金などもらわなくても旅行に行きたい人々で、しかし、コロナが怖くて旅行に行けない人々、つまり、余裕のある高齢者層、もっとも観光需要の顧客として重要で、長期的にも観光業界にとって最重要な顧客を、コロナで怖がらせたままでは、観光業にとっても、最悪の状況だ。

GoToで旅行に押しかけ、著名な観光地は、コロナ前を上回る賑わいだ、ちょっと密になっている、とメディアはもちろん報道する。ますます最重要顧客層は旅行に行かなくなる。

最悪だ。

カネをばらまいて、目先だけ効果があったような錯覚に陥っているだけだ。

まったく利害もなく、理解もない政治家たちが、錯覚で喜ぶのはまあ仕方ないとして、観光業界、大丈夫か。

自分たちの首を絞めていることに気づかないのか。

再び自滅だ。

*この記事は「小幡績PhDの行動ファイナンス投資日記」からの転載です

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米英欧など18カ国、ハマスに人質解放要求 ハマスは

ビジネス

米GDP、第1四半期は+1.6%に鈍化 2年ぶり低

ビジネス

米新規失業保険申請5000件減の20.7万件 予想

ビジネス

ECB、インフレ抑制以外の目標設定を 仏大統領 責
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 7

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    自民が下野する政権交代は再現されるか

  • 10

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story