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市民19人の本音 ブレグジットを語る表情は明るかった

FACING BREXIT

Photographs by PIOTR MALECKI

2019年03月26日(火)17時15分

【エイミー・ベザーテ(34)】シンクタンクの研究者。フランス人のパートナーを持つ彼女にとってブレグジットは「ヨーロッパ人としての自己認識を破壊する」政策だ

<ブレグジットの期限が迫り政治は混乱するが、有権者の表情は意外に明るく物静かだ>

※4月2日号(3月26日発売)は「英国の悪夢」特集。EU離脱延期でも希望は見えず......。ハードブレグジット(合意なき離脱)がもたらす経済的損失は予測をはるかに超える。果たしてその規模は? そしてイギリス大迷走の本当の戦犯とは?

◇ ◇ ◇

ブレグジット(イギリスのEU離脱)の期限が迫っている。混乱を招いている政治家とは対照的に、ロンドン市民がブレグジットを語る表情は明るい。生活に影響する話題とあって、尋ねると進んで話してくれる。メディアは政治と交渉ばかり伝えるが、私は結果を受け入れるしかない市民を撮り、その声を記録したかった。

私はポーランド人として、イギリスのEU残留を望んでいる。どんなに欠点があっても、それが最善の道だろう。多くの戦争の惨禍をもたらした自国中心主義に対抗して、EUは統合と協調、人類の価値を体現している。離脱の問題点は、経済的・社会的なものではない。それらも確かに深刻だが、主な損失は、自国中心主義から協調へという誇らしい流れが主要国の離脱によって逆流しかねないことだ。

私は3日間にわたってロンドンのさまざまな地区を回り、撮影と取材を行った。そこにあったのは、とても穏やかで、ごく日常の風景だった。ブレグジットは表舞台よりも、日々の生活を送る人々の心の中にこそ見えるものなのだ。

――ピオトル・マウェツキ(写真家)

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【ロバート・ハドリー(56)】「初めは経済が落ち込んでも、イギリスはすぐに外国人投資家にとって割安で魅力的な市場になり、景気はずっとよくなる」

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【ジェニー・マシューズ(70)】写真家。「壁を築く」島国根性を嫌う彼女にとって、イギリス人の偉大さとは「多文化主義を生きる」ことにほかならない

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【マルイン(38)】路上生活者。「移民がこの国を支配し、職を奪い、全てがめちゃくちゃだ。ブレグジットはイギリスの再独立になると思う」

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【ジョルジーナ(22)】ギャラリー勤務。「父は糖尿病でインスリン注射を大量に打っている。輸入が止まれば、あらゆる医薬品が値上がりしそう」

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【シャロン・ハドリー(54)】無職。2016年の国民投票で「EU残留に投票したのは孫のため」と言う。「彼らが大人になったときに可能性を閉ざしかねない」

【関連記事】ブレグジットの勝者はEU その明るい未来像

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