Picture Power

【写真特集】非暴力のはずのLGBTが銃を握る理由

CONCEALED: LGBT GUN OWNERS

Photographs by BLAKE LITTLE

2019年04月16日(火)18時20分

【Lynn, Brett, Joe】<銃規制にはいろいろな選択肢があるが、私たちはこう理解している「警察は常に全ての場所にはいない」>(キャプションは本文後に続く)

<銃を持つことで平等を感じたいLGBTと、そうせざるを得なかった彼らの脆弱さ>

銃を持つことで平等を感じたい――。LGBT(性的少数者)による銃クラブ「ピンク・ピストルズ」に所属するある会員の言葉だ。クラブの理念は、「自分の銃口で黙らせろ」。

ピンク・ピストルズだけではない。16年6月、フロリダ州オーランドのLGBTが集まるナイトクラブで銃乱射事件が起きて以降、同じような銃クラブが誕生した。トリガー・ウォーニング・クイアー&トランズ・ガン・クラブもその1つ。

「私たちのような『奇妙な』存在は自衛できない弱者と見なされている」と、クラブ創設者のジェイク・アレンは言う。「白人至上主義者やネオナチのような(LGBTを嫌悪する)奴らに知ってもらいたい。私たちは自衛のために一歩踏み出したと」

写真家ブレイク・リトルは、伝統的にリベラルで非暴力を訴えるLGBTによる銃クラブに興味を引かれた1人だ。リトルは言う。

「撮影の際には、偏見を持たず、一方的な判断を迫る写真にならないように心掛けた。私が表現したかったのは、銃を所有することで現れる力と共に、そうした武器を手にせざるを得なかった彼らの脆弱性や恐怖心の両面だ」


<冒頭写真のキャプション>
(リン、左)テキサス育ちなので銃はどこにでもあって、まさに人生そのものという存在だった。大人になってからは常に拳銃を持ち歩いていた。どんな銃器でも保身になるが何より安全管理が重要だ。アウトドアに出掛けたときにピンク・ピストルズの存在を知り、ラスベガス支部を復活させる形でこのクラブに関わるようになった。銃を隠していればOKとする「隠し銃携行許可法」を推進している。自分自身はLGBTであることによって暴力的な被害を受けたことはない。悲しいことだが、オーランドの事件はクラブの理念を強固にした。銃規制についてはいろいろな選択肢があると思うが、私たちの理解は「警察が常に全ての場所にいるわけではない」ということだ。


pplgbt01.jpg

【Charlotte】
私の人生において銃は常に身近にあった。父は多くの種類の銃を持っていて、それらの武器に尊厳を持って接するよう教えられた。最初に銃を撃ったのは6つか7つの頃。16歳の時に最初のショットガンを与えられ、ごみ処理場でよくクレー射撃をした。18歳で初めて自分で銃を買い、不審者が家にやって来たときにそれで威嚇したこともある。トランスジェンダーであるゆえ職場や教会で差別を受けたこともあったが、言葉で罵られただけだった。オーランドのナイトクラブでの銃乱射事件にはひどく心を痛めつけられた。銃のない世界は、逆説的だが、無法地帯のことだと悟った。クラブの店主が銃所持を認められていれば犠牲者はかなり少なかったはずだ。


pplgbt02.jpg

【Kail】
射撃場に初めて行ったのは16年。それまでは激しい銃規制論者だったが、射撃場で銃を撃ったとき、解放感に満たされた。銃を持つことで安心感を得た。持ち歩くかは別にして、所有しているだけで守られている気がした。あまりに自信が付いたので、加害者になるリスクもあると思ったほどだ。ゲイであることで被害を受けたことはある。セルビアでゲイパレードに参加したときには警察官が大勢いたにもかかわらず100人以上が負傷する事件が起きた。銃所持を認める合衆国憲法修正第2条はもともと圧政から身を守るためのものだったが、今はそれ以上の意味がある。多くの人がさまざまな権利のために戦っているなかで、私もこれ以上権利を失いたくない。


pplgbt03.jpg


【Dave】
生まれ育った小さな田舎町では、銃を持つことや狩りが普通のことだった。父や祖父からは銃器に対して尊厳を持って接するよう教えられた。初めて散弾銃を撃ったのは5歳の時だった。LGBTであることが理由で暴力的な被害を受けたことはないが、HIV感染が流行したときには激しい差別を受けた。この世に絶対的な権利なんてあるのだろうか。憲法修正第2条についても同じ思いを持っている。建国の父たちが勝ち取った権利なので廃止されるべきではないと考えているが、それだって絶対的な存在ではない。危険な人物が銃器を所有しないようにする方法を探る議論の余地はあると思うが、今は撤廃論と擁護論ともに極論が横行していて、およそ民主的でない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA

ビジネス

根強いインフレ、金融安定への主要リスク=FRB半期

ビジネス

英インフレ、今後3年間で目標2%に向け推移=ラムス

ビジネス

米国株式市場=S&Pとナスダック下落、ネットフリッ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story