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【写真特集】台湾の美景を不条理が浸食する
VISION OF TAIWAN
Photographs by WU CHENG-CHANG
【台西 2009】夜明けの空に美しく輝くのは台湾最大の石油化学工業団地。手前にはカキ養殖場が広がる。工業と漁業、どちらも人々の生活を支えるのに欠かせないものだが、ここでは2つがあまりに近接しており、経済活動と環境のバランスを考えずにいられない
<急激な近代化は台湾の環境に何をもたらしたのか>
夜明けの海辺や夕闇迫る水田......台湾の美しい自然の風景の背後に、アンバランスな建築物や照明が写り込む。「台湾『美景』」と題した一連のシリーズで私は、急激な近代化が台湾の環境に何をもたらしたのか、私的な観察と肌で感じた経験を形にした。
それぞれの風景の中に忍び込むのは、私自身だ。大画面をバックにたたずみつつ、顔にはストロボを当てて白く飛ばした。台湾の美しい風景の前に立つ顔のない人間からは感情が読み取れず、制御不能で視界を奪われ、方向性を見失った者の姿が現れる。
一見すると壮観な自然の風景にも、不条理な人工物や環境危機が見え隠れしている。顔のない人間を置くことによって私は、周りの環境に無関心で、現実を見ようとしない人々を超現実的に描き出した。
新型コロナウイルスが地球上の人類全てに強烈な影響を与えている今、立ち止まって考えるべきときなのかもしれない。私たちはどんな人生を、どんな環境を望んでいるのだろうかと。
――呉政璋(フォトグラファー)