コラム

「小さな男」トランプが支配するアメリカに、「大きな男」マケインの死が響く

2018年09月07日(金)15時45分

強敵全てが敬意を示す

トランプは大統領選の期間中、本人はベトナム戦争への徴兵を回避したにもかかわらず(徴兵免除の理由はかかとの骨の小さな損傷だった)、ベトナムで捕虜になったマケインは英雄ではないと言った。さらにマケインの死の直後には、既に用意されていた追悼声明の発表を拒み、ホワイトハウスでの半旗の掲揚も短時間で打ち切って人間としての器の小ささを露呈した。

ブッシュ、オバマ、ベトナムの元収容所長......最も激しく争った敵がマケインに敬意を示す理由の1つは、現在の世界が「小さい男」によって支配されているからだ。

マケインは「大きな男」だった。自分の利益より、祖国の利益を重視した。ベトナムでの捕虜時代、北ベトナム政府が宣伝工作の一環として釈放を持ち掛けたが、この提案を拒否。さらに数年間、暗い捕虜収容所の部屋で暮らし続けることを選んだ。

彼が一般の人々に向けて書き残した最後の言葉は、この国を支配する「小ささ」に対処する上で、全てのアメリカ人の参考になるはずだ。

「現在の困難に絶望してはならない。アメリカの約束する未来と偉大さを常に信じよう。アメリカ人は決して諦めない。決して降伏しない。決して歴史から逃げたりしない。私たちが歴史をつくるのだ」

<本誌2018年9月11日号掲載>

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サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

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