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29歳天才クオーターバックの早過ぎる引退から学べること
ラックはチームを3年連続プレーオフに導いたが…… ZACH BOLINGERーICON SPORTSWIRE/GETTY IMAGES
<輝かしいキャリアに自ら終止符を打った決断からビジネスマンが読み取るべき重要な教訓とは>
定年前や正式な契約期限切れの前に退職して、同僚や部下から「ブーイング」の大合唱を受けることを想像してみてほしい。
アメリカンフットボール史上最も才能ある選手の1人だったアンドリュー・ラックは、世間の猛烈な非難の声と共に輝かしいキャリアを終えた。スーパースターはなぜ29歳の若さで引退を決めたのか。
ラックはスタンフォード大学で抜群の実績を収めた後、NFL(全米プロフットボールリーグ)の2012年ドラフトでは全体の1位でインディアナポリス・コルツに入団。その才能とプレーに懸けたコルツは、チームのエース・クオーターバック(QB)であり、当時歴代ナンバーワンQBの呼び声も高かったペイトン・マニングをトレードに出した。
ラックは新人の年から卓越したプレーをみせ、3年連続でコルツをプレーオフに導いた。若手QBとしては、ほとんど前例のない快挙だ。
2016年には、チームと総額1億2200万ドルの5年契約を結んだ。しかし、ラックは度重なる負傷に悩まされた。肩、関節、腹部、腎臓......。17年はシーズンを丸ごと棒に振った。それでも18年には驚異の復活を遂げ、パス獲得ヤード4593、タッチダウンパス39本を記録し、カムバック賞に輝いた。
来る2019年シーズンは、念願のーパーボウル(NFL優勝決定戦)出場と全米ナンバーワンの獲得が期待されていた。ラックは2019年シーズン前の時点で負傷者リストに名前が載っていたが、開幕直前での若過ぎる引退表明はトランプ政権のどんな発表よりも衝撃的だった。これにはファンだけでなく、多くの元NFL選手からも厳しい声が相次いだ。
元QBのスティーブ・バーラインはツイッターでこう批判した。「これは擁護できない。シーズン開幕2週間前(の引退)は、チームとチームの仲間たち、NFLのファンに対する正しい行為ではない」
「退く勇気」を忘れるな
ラックは引退表明の記者会見で、けがと痛みのせいでフットボールへの愛情がなくなったことを認めた。あるインタビューでは、おそらくQBよりも高校の歴史教師になったほうがずっと幸せだっただろうと語った。ラックの引退は、アメリカで最も人気のあるスポーツの本質をめぐる議論を巻き起こした。フットボールは暴力的で危険な競技なのか。選手たちはローマの剣闘士級の痛みに耐えなければならず、残りの人生を棒に振りかねないことを自覚しているのか。しかし、ラックの早過ぎる引退は、アメリカンフットボールの世界にとどまる問題ではない。
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