Newsweek

風刺画で読み解く中国の現実

Superpower Satire (CHINA)

香港デモと中国政府の「本音」 反中ユーザーSNSへの攻撃は止められていた

2019年08月06日(火)18時15分
    香港デモと中国政府の「本音」 反中ユーザーSNSへの攻撃は止められていた

    (c)2019 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN

    <逃亡犯条例改正に断固として反対する香港の抗議をめぐって、香港の著名人と中国政府には共通する態度が見られる>

    6月以降、逃亡犯条例改正案に反対するためのデモが香港で繰り返されている。改正案がもし成立したら、香港で身柄を拘束された容疑者は中国本土への移送が可能となる。言論の自由も崩壊し、一国二制度を前提とした香港司法の独立も終わりとなる......と香港人は「香港の中国化」をとても怖がった。

    デモが理性的で平和的だった6月、中国メディアはこの件を一切報道しなかった。デモを支援する者が中国のSNSに投稿した情報や写真もすぐに削除された。その結果、普通の中国人は、その時香港で何が起きていたかほとんど知らなかった。

    だが、7月1日に事態は一転する。その日は香港返還の22年目の記念日で、これまで平和的だったデモはなぜか急に過激化し、参加者は立法会(議会)に突入した。これをきっかけに、中国の官製メディアはデモについて積極的に報道し始めた。「港独暴徒らは警察を攻撃して国章を破壊した! これは祖国を分裂させる行為だ。絶対許せない!」

    「港独」とは香港独立を主張すること。香港も台湾もどちらも中国の一部で独立なんか絶対許せない──これは中国人が小さい時から受ける愛国教育で、「祖国統一」こそ絶対的な正義。だから今回のデモに「港独」というレッテルが張られると、ふだん政府を批判する自由派さえも閉口するしかなかった。応援どころか、理解や同情を示しただけで「港独を支持するのか」と、SNSの友人リストから削除される。

    だから香港の文化人や人気歌手は次々と政府への支持を表明している。デモ隊への支持を表明したアンディ・ラウやトニー・レオン、チョウ・ユンファは少数派。ちなみに親中派の代表であるジャッキー・チェンは沈黙している。沈黙は金だ。

    ただ、世論を操っているはずの共産党も、香港のデモ隊をこれ以上刺激して事態を悪化させたくはないようだ。「翻墙(壁越え)」して反中国的ネットユーザーのフェイスブックやツイッターアカウントを攻撃することで有名な掲示板「帝吧」のユーザー「小粉紅」たちが、デモ参加者のフェイスブックを攻撃しようとしたら、中国政府の命令で中止させられた。

    意外だが中国政府も本音は、「沈黙は金」?

    【ポイント】
    小粉紅
    シャオフェンフォン。90年代以降に生まれ、「完全に赤く染まっていない未熟な共産主義者」を指す。中国語で小粉紅は薄ピンク色を意味することに由来。

    帝吧
    ティーバー。中国の検索エンジン百度(バイドゥ)の掲示板の1つ。フォロワー数は3100万超。小粉紅たちの「大本営」で、彼らの得意技は1秒間で30回繰り返す迷惑投稿。

    <2019年8月13&20日号掲載>

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    ※8月13&20日号(8月6日発売)は、「パックンのお笑い国際情勢入門」特集。お笑い芸人の政治的発言が問題視される日本。なぜダメなのか、不健全じゃないのか。ハーバード大卒のお笑い芸人、パックンがお笑い文化をマジメに研究! 日本人が知らなかった政治の見方をお届けします。目からウロコ、鼻からミルクの「危険人物図鑑」や、在日外国人4人による「世界のお笑い研究」座談会も。どうぞお楽しみください。

    プロフィール

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    ラージャオ(中国人風刺漫画家)/トウガラシ(コラムニスト)

    <辣椒(ラージャオ、王立銘)>
    風刺マンガ家。1973年、下放政策で上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、進学してデザインを学ぶ。09年からネットで辛辣な風刺マンガを発表して大人気に。14年8月、妻とともに商用で日本を訪れていたところ共産党機関紙系メディアの批判が始まり、身の危険を感じて帰国を断念。以後、日本で事実上の亡命生活を送った。17年5月にアメリカに移住。

    <トウガラシ>
    中国出身、作家、コラムニスト。ホテル管理、国際貿易などの仕事を務めたのち、98年に日本に定住。中国語雑誌の編集などを経て、個人的な視点で日本の生活や教育、文化を批判、紹介している。

    <このコラムの過去の記事一覧はこちら>

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