Newsweek

風刺画で読み解く中国の現実

Superpower Satire (CHINA)

まるで中国皇帝......「習近平そっくりさん」のアカウントが閉鎖される

2020年06月04日(木)19時00分
    まるで中国皇帝......「習近平そっくりさん」のアカウントが閉鎖される

    China's Latest Emperor / (c)2020 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN

    <習政権が始まって以来、中国では特権文化を復興させる動きが見られる。かつて皇帝や主君の名前を口にすることがタブーとされたが、今日ではそっくりなだけで告発される?>

    「皆さま、私のTikTokアカウントがまたロックされました!」

    先日、欧州在住で中国出身のオペラ歌手・劉克清(リウ・コーチン)はSNS上にこんな投稿をした。顔があまりに習近平(シー・チンピン)主席とそっくりなので、プロフィール画像が「イメージ違反」だと実名告発されたのだ。彼のTikTok(ティックトック)アカウント閉鎖はこれで3回目になる。

    「普天之下、莫非王土、率土之濱、莫非王臣(普天の下、王土に非ざるは莫く、率土の濱、王臣に非ざるは莫し)」──中国伝統の王土王民思想である。土地だけではなく、全ての人民も帝王の支配物であるという意味だ。そして、中国では皇帝や主君などの支配者の名前を呼ぶことは極めて無礼なことだという特権文化「避諱(ひき)」がはびこってきた。うっかりした一言が、身を滅ぼすような災いを招いてしまう。

    ネットやビデオ動画などがない古代には、誰も皇帝の顔が分からなかった。おかげで一般人はその権威には恐れを抱くものの、「皇帝そっくりさん」の告発は不可能だった。しかし、現代は最高指導者の顔をみんな当たり前のように知り、SNSで誰もが自分の顔を公開できる時代だ。科学技術と特権文化がつながり、「避諱」が「避顔」にまで発展した。

    習政権が始まって以来、中国はずっと伝統文化の偉大な復興を唱えている。「避諱」という特権文化も中国の伝統の一部だ。劉がイメージ違反という罪で3回も告発された件ほど完璧な「伝統復興」はない。

    「そっくり罪」だけではない。近年、中国では伝統の祝日「除夕(大みそか)」もうっかり口に出せなくなっている。それは「夕」と「習」の発音が同じ「xi(シー)」であるため。「除夕」は「除習(習を除去)」と思われかねないので、官製メディアの社員の間では、「使わないよう」お互いに注意するという。そのほか、包子(肉まん)や維尼熊(クマのプーさん)も中国ネット上でタブー視されている。どれも習を連想させるからだ。

    最高指導者とそっくりなだけで告発される──。21世紀になっても、共産党政権になっても、中国で特権文化の根がどれだけ深いかよく分かる。

    【ポイント】
    避諱
    皇帝など目上の者の名前の一部を直接口にしたり、書いたりすることをタブー視する風習。中国など東アジアに見られる。

    包子や維尼熊
    2013年に習近平がプロパガンダのため北京の肉まん(包子)店を電撃訪問した後、習を揶揄する「習包子」というスラングがネットに誕生。クマのプーさん(維尼熊)は習と体形が似ていることから、何度もネットで検閲対象になった。

    <本誌2020年6月9日号掲載>

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    2020年6月9日号(6月2日発売)は「検証:日本モデル」特集。新型コロナで日本のやり方は正しかったのか? 感染症の専門家と考えるパンデミック対策。特別寄稿 西浦博・北大教授:「8割おじさん」の数理モデル

    プロフィール

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    ラージャオ(中国人風刺漫画家)/トウガラシ(コラムニスト)

    <辣椒(ラージャオ、王立銘)>
    風刺マンガ家。1973年、下放政策で上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、進学してデザインを学ぶ。09年からネットで辛辣な風刺マンガを発表して大人気に。14年8月、妻とともに商用で日本を訪れていたところ共産党機関紙系メディアの批判が始まり、身の危険を感じて帰国を断念。以後、日本で事実上の亡命生活を送った。17年5月にアメリカに移住。

    <トウガラシ>
    中国出身、作家、コラムニスト。ホテル管理、国際貿易などの仕事を務めたのち、98年に日本に定住。中国語雑誌の編集などを経て、個人的な視点で日本の生活や教育、文化を批判、紹介している。

    <このコラムの過去の記事一覧はこちら>

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