最新記事

乱獲スパイラルを食い止める第3の道

マグロが消える日

絶滅危惧種指定で食べられなくなる?
海の資源激減を招いた「犯人」は

2010.03.11

ニューストピックス

乱獲スパイラルを食い止める第3の道

海洋汚染と乱獲を防ぐため米商務長官が打ち出した大胆計画に環境保護派もビジネス界も賛同するワケ

2010年3月11日(木)12時07分

 環境保護とビジネスの落としどころを見つけるのは神業に近い。だが09年8月20日にロック米商務長官が打ち出した計画には、環境派もビジネス派も賛同しているようだ。

 漁業の衰退と海洋汚染は気候変動につながり、さらなる衰退と汚染を招くという悪循環を生む。そこでロックは、北太平洋から北極海における商業漁業の拡大を制限するという思い切った手に打って出た。早ければ2010年から、氷に覆われたボーフォート海の約52万平方キロに及ぶ海域で商業漁業の拡大を禁止し、乱獲されているホッキョクダラやズワイガニなどの研究を進められるようにするという。

 世界的に魚の需要は高まっているが、食用として人気のタイセイヨウマダラやクロマグロの数は、乱獲によって過去10年間で激減した。その結果、これまで氷に閉ざされていた北太平洋の海域にビジネスチャンスが生まれる可能性はある。

「気候変動で北極海の氷が解けるにつれ、北極海での商業漁業に関心が高まっている」と、ロックは言う。「アメリカはこのもろい生態系の健全性を保ちつつ、かつ持続可能な漁業を計画できる立場にある」

 ロックの決断には、環境保護団体も賛同している。「北極海に生息する哺乳類など多くの種と地元社会にとって、良い意思決定を可能にする重要な一歩」だと、ピュー環境グループのマリリン・ハイマンは言う。

 ビジネス界も異論はなさそうだ。一定した持続可能な供給こそが、漁業の成功のカギを握る。世界の海の多くは公海なので、ある国が漁を控えると途端に他の国々が群がるが、アメリカの管轄水域なら、その心配はないだろう。

[2009年9月 2日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中