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バルマーがまだMSにいたなんて驚き

14年近い異例の「長期政権」に市場はうんざり、次期経営トップへの期待が株価を押し上げた

2013年9月4日(水)15時11分
ダニエル・グロス(ビジネス担当)

革新性は皆無 最後の仕事はノキアの買収だったバルマー Robert Galbraith-Reuters


 マイクロソフト(MS)のスティーブ・バルマーCEOが先週、今後1年以内に退任すると発表した。最近のMSの苦戦ぶりを考えれば、辞任そのものは意外ではない。それより驚かされるのは、バルマーがアメリカの代表的企業のトップを14年近くも務めてきたことだ。

 今はトレンドが目まぐるしく入れ替わる時代。製品も企業もビジネスモデルも、成功は長続きしない。SNSのマイスペースやブラックベリーの栄枯盛衰は、そのいい例だ。

 しかもバルマー時代は、1980~90年代に繁栄を謳歌したMSのような大手IT企業にとって冬の時代だった。ハイテク株が多いナスダック市場の総合指数を見ると、90年代に急上昇して00年3月に5000ポイントの大台付近に達したが、そこから一気に急降下。その後は徐々に持ち直しているが、現在も3648ポイントと史上最高値を25%ほど下回っている。

 株価低迷の一因は、大手企業の業績が回復していないせいだ。00年に70ドル台半ばだったインテルの株価は現在22ドル。シスコシステムズの株価は00年3月から約7割も下落した。MSも99年末に60ドル前後を付けたが、現在は当時より4割ほど低い34ドル前後で取引されている。

 理由は明らかだ。90年代後半はITバブルの時代で、当時の株価は過大評価だった。さらにその後はネットの拡大と競争の激化、クラウド・サービスやモバイルの成長、新たなライバルの出現で業界地図が一変した。

 だがアップルを除く既存の大手企業は、コア事業へのこだわりを捨てられず、変化にうまく対応できなかった。MSの場合は、携帯音楽プレーヤーやプロバイダー事業、加えてゲームやタブレット端末などに次々と手を広げたが、コア事業のOSやビジネスソフトウエアと並ぶ収益の柱に成長させるのは至難の業だった。

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