最新記事

自動車

ベンツの弟分「スマート」が日本で躍進している理由

2017年8月4日(金)17時02分
森川郁子(東洋経済記者)※東洋経済オンラインより転載

店舗を運営する輸入車ディーラー、シュテルン京都の河原律子専務によると、「(オーダーメイドのスマートは)設計事務所やデザインの分野で仕事をしている方からの注文が多い。半年という納期でも待ってもらっている」という。

誰でも気軽に立ち寄ってもらえるよう、スマートセンターにはカフェも併設した。プロのラテアートを楽しめるほか、電子機器の充電コンセントも設けている。

toyokeizai170804-4.jpg

気軽に立ち寄れる雰囲気作りのため、スマートセンターにはカフェも併設した(記者撮影)

クルマ好きだけではなく、地元住民や、たまたま通りかかった観光客、動物園帰りの家族連れまで、「スマート」のブランドを広く知ってもらい、親しみを持ってもらうことが狙いだ。

このディーラーらしからぬ建物は、MBJとシュテルン京都がアイデアを持ち寄って生まれたものだ。MBJマーケティング・コミュニケーション部スマート課の坂井正剛マネージャーは、「京都らしさと、誰でも入りやすい雰囲気を感じられる空間を作りたかった。京都のさまざまな場所を探す中で、もともとカフェだった日本風の建物を見つけ、クルマ屋によみがえらせた」という。

MBJはこれまでも京都府と提携しており、京都の魅力を伝えるプロジェクト「もうひとつの京都」に昨年から参加。4月からは、京都駅前で利用できるカレコのカーシェアサービスにスマートを6台提供。さらに今回のプロジェクトに合わせて6月、京都府と地域活性化連携協定を締結した。

今後は観光事業の振興や伝統事業の継承、地域活性化への取り組みで協力していくという。街乗りに適したライドシェア事業などの展開も検討する。

上野社長は「京都府とは以前からさまざまな取り組みを続けており、ご縁がある。スマートに乗って、京都市内の観光地以外の京都も楽しんでもらいたい」と、プロジェクトへの期待を込めた。

toyokeizai170804-5.jpg

スマートセンターの入り口にある金のスマートは金閣寺をイメージ(記者撮影)

親会社は排ガス不正の渦中にいるが...

今年2017年は、スマートとメルセデス・ベンツを合わせた日本での販売台数で、5年連続の最高記録更新に期待がかかっている。だが5月23日、本国ドイツではディーゼルエンジンの排ガス不正への関与について当局の捜査が入った。これに対し同社は7月21日、欧州、日本、韓国でディーゼル車の無償改修を行うことを発表した。

今後の捜査の進展によっては、日本での販売にも影響が出てくる可能性も否定できない。この逆境を乗り切れるのか。スマートが担うべき役割はそのサイズ以上に大きいといえる。

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。
toyokeizai_logo200.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

神田財務官、介入有無コメントせず 過度な変動「看過

ワールド

タイ内閣改造、財務相に前証取会長 外相は辞任

ワールド

中国主席、仏・セルビア・ハンガリー訪問へ 5年ぶり

ビジネス

米エリオット、住友商事に数百億円規模の出資=BBG
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 7

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中